解決事例
離婚をしたい場合
2006年6月3日、CさんがT法律事務所のM弁護士を訪ねてきました。
Cさん 「夫と別居して10年になるのですが、最近夫(D)と離婚してNさんと結婚したいと思うようになりました。別居をしたのは、夫の浮気を機に、始終喧嘩をするようになってしまったからです。Nさんとは、1年前に知り合ったので、決してNさんと一緒にいたいために別居をしたわけではありません。夫は浮気相手と内縁関係にあることもあって、最近まで全く連絡を取っていませんでしたが、離婚の件を伝えると、全く離婚をする気は無いと言ってきました。夫は内縁関係を続けていれば十分と考えているようで、離婚をしないというのは、明らかに私に対する嫌がらせに過ぎません。こんな嫌がらせを受けるのなら、Nさんと結婚することは、隠しておけばよかったと思っています。何とかならないものでしょうか。」
M弁護士 「Dさんに連絡をしたのは、いつごろですか。電話でしたのですか。」
Cさん 「はい、電話で連絡しました。直接は会いたくないものですから。たしか、4月5日だったと思います。」
M弁護士「そうですか。2ヶ月くらい前ですね。では、この間に連絡を取ったことは?」
Cさん 「ありません。結婚するから離婚して欲しいと言ったら、ものすごい勢いで怒鳴られて、怖くなって、あれ以来…。」
M弁護士「なるほど。本当に離婚する気が無いかも含めて、少し確認したほうがいいかもしれませんね。あと、お子さんはいらっしゃいますか?」
Cさん 「それは、どうして…。」
M弁護士 「もし、離婚をするのであれば、親権などはどうされるのかと思いまして。」
Cさん 「結婚してから半年で別居しましたから、子供はいません。」
M弁護士 「そうですか。では、……」
この後も相談は続き、結局もう一度Dさんに連絡をして、離婚をする気が無いのか話合いをすることになりました。CさんはDさんに電話をするのが怖いということなので、M弁護士が付き添って、連絡を取りました。
Dさんと交渉した結果、やはり離婚をする気が無いということなので、M弁護士は家庭裁判所に対して離婚調停の申立てをする方針を立てました。
- (解説)
なぜ、M弁護士は訴訟を提起しなかったのか。それは、離婚をはじめとした家庭に関する事件については訴訟を提起する前に、まず家庭裁判所に調停を申し立てる必要があるとされているからです(家事審判法18条)。これを「調停前置主義」と言います。 「調停」は、当事者の一方が申し立てることで、相手方も引き込まれる手続なので、その点は裁判と同じです。しかし、当事者が合意しない限り成立しないという点が、裁判とは異なります。調停前置主義が採られているのは、特に家庭事件については、当事者の合意で解決ができるのであれば、その方が望ましいという政策的な配慮によります。 今回のようなケースではお互いの意思は固く、なかなか調停が成立するということもないかもしれませんが、話合いで離婚を回避したり、離婚に合意したりすることは決して珍しくはありません。
- 調停を申し立てたものの、やはりDさんは離婚に応じようとせず、調停は成立しませんでした。そこで、M弁護士はCさんと相談して、訴訟を提起する方針を立てました。
- (解説)
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離婚のような家庭事件に関する訴訟は、通常の訴訟と少し手続が異なります。通常訴訟の手続法である「民事訴訟法」の特例として「人事訴訟法」が適用になるのです。人事訴訟の特徴はいくつかあるのですが、重要なものとして@家庭裁判所が第一審の管轄を有すること、A参与員の制度があること、B当事者の主張立証に必ずしも裁判所が拘束されないこと、が挙げられます。
@の点については、家庭事件についての人的資源が家庭裁判所は豊富であり、調停から訴訟への移行も連続的にできる等の理由から、平成15年の人事訴訟法改正によって実現したものです(人事訴訟法4条)。
Aの参与員とは、審理や和解の試みに立ち合って、裁判官に意見を述べる役職なのですが、一般国民の中から選ばれます。家庭事件については、一般国民の良識を反映させた方がよいという政策に基づき平成15年の人事訴訟法改正により、人事訴訟に取り入れられました。この参与員は、家庭裁判所が、必要があると認めたときにだけ立ち会わせるもので、すべての事件について関与するわけではありません(人事訴訟法9条1項)。
Bについては、民事訴訟の場合、主要な事実について当事者が主張しないことは判決で考慮できない、当事者間で争わない主要な事実について違う認定を裁判所はできない、職権で裁判所は証拠を取り調べられない、という原則をとっています(弁論主義)。これは、一般の訴訟の場合、結局のところ当事者間の紛争なのだから、当事者が主体的に主張立証すべきであり、国家は必要以上に立ち入るべきではないという政策に基づきます。しかし、このような政策は、言ってみれば「勝手にしなさい」というようなものであるから、家庭事件については、それでは余りにもドライということになります。つまり、家庭事件の場合は、もう少し裁判所が当事者の事情に立ち入って、事実を調べて、当事者についてどういった解決がベストなのか、真実は何であるのか、考えるのです。その結果、裁判所は、当事者の主張立証に拘束されないという原則が適用されることになったのです(職権探知主義、人事訴訟法19条、20条) - 訴訟の結果、離婚は認められ、Dさんも仕方ないと考え、判決はそのまま確定しました。






