判例紹介

各項目ごとに判例をご紹介いたします。
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協議離婚届出書を作成後に協議離婚を翻意し、その後相手が届出書を提出しても、その届出は無効である。(最判昭和34年8月7日)

【判旨】
本件協議離婚届書を作成後、X男は市役所係員に対し、承諾したものではないから受理しないでほしい旨申し出でたことによるとX男は右届出のあった前日協議離婚の意思をひるがえしていたことが認められる。「そうであるとすればY女により届出がなされた当時にはX男に離婚の意思がなかったものであるところ、協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、本件の如くその届出の当時離婚の意思を有せざることが明確になった以上、右届出による協議離婚は無効であるといわなければならない。」そして、かならずしも「右翻意が相手方に表示されること、または、届出委託を解除する等の事実がなかったからといって、右協議離婚届出が無効でないとはいいえない。」

勝手に協議離婚届をした場合は無効だが、後で追認できる。(最判昭和42年12月8日)

【判旨】
家事調停において、届出による協議離婚を認めることを前提にして、「上告人が被上告人から右離婚にもとづく慰藉料金三万円の支払を受ける旨の合意をしたこと等の事実関係のもとにおいて、上告人が右家事調停の際に、右協議離婚を追認したとした原判決の認定判断は、これを正当として是認することができる。」

妻が精神病の夫のもとを去り、長期にわたった同居の努力をしなかった場合は「悪意の遺棄」と認められることがある。(岐阜地判昭和31年10月18日)

【判旨】
「被告は原告の許を去ってから既に十年以上の歳月を経ているのにその間原告と生活を共にすべく何等の努力も払わず、漫然周囲のなすに任せ、寧ろ傍観的態度をすら取っているのであって、元来原被告間の事実上の夫婦生活は一年足らずの短期間に止まり、その後の長い空白期間と、原告が心神喪失者である事情とを併せ考えれば、被告の原告に対する愛情はまったく冷却したと観るのが自然である。
以上認定の諸事情からすれば、被告には既に原告との婚姻を継続する意思がないものといわねばならない。もっとも被告が婚家を去ったのは、うた夫婦との不和が原因であり、然もその後原告はうた夫婦と生活を共にしているので、被告は原告の許に復帰することを□躇する気持もあるであろうが、そのような事情があるとしても、被告が病身の原告に妻としての愛情を俸げ、真に原告との正常な生活を貫こうとする決意があるならば、周囲の障害を排除して原告の許に復帰出来る環境を作るよう積極的努力がなされて然るべきであるのに、被告は単に戸籍上うた夫婦をして原被告の養子たる地位を失わしめるため養子縁組無効確認の訴を提起したことを除き、十年もの永い期間中かかる一片の努力を払った形跡も認められないのである。以上の如く原告との婚姻継続の意思を放棄し、十年間も原告をかえりみない事実から判断すれば、被告は原告を悪意をもって遺棄したものと断ぜざるを得ない。即ち右事実は民法第七百七十条第一項第二号の離婚事由に該当することが明白である。」

民法770条は、『配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないとき』を離婚請求の一事由としているが、同条2項は、裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる旨を規定しているので、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度その方途の見込のついた上でなければ、婚姻関係を廃絶することはできない。(最判昭和33年7月25日)

【判旨】
「民法七七〇条は、あらたに『配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないとき』を裁判上離婚請求の一事由としたけれども、同条二項は、右の事由があるときでも裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる旨を規定しているのであって、民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもって直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである。原審が『もしそれ離婚後における控訴人(上告人)の医療及び保護については、被控訴人(被上告人)、控訴人補助参加人、その他関係者の良識と温情とに信頼し、適当なる方策の講ぜられることを期待する』旨判示しかかる方策をもって、民法七七〇条二項適用の外にあるがごとき解釈を示したことは、見当違いの解釈と云わざるを得ないのであつて、かかる観点からいっても、後見監督人または後見人をして、訴訟の当事者として離婚訴訟の進行中において各関係者間に十分にその方策を検討せしめることを適当とするのである。」

不治とはいえない精神病の妻に対する離婚請求は、療養・生活につき具体的方途を講じていなくても認められた。(東京地判昭和42年11月29日)

【判旨】
「まず、民法第七七〇条第一項第四号の離婚原因による原告の離婚請求につき判断するのに、証拠を総合すれば、妻は、精神分裂病に罹患し、」「保養院に入院し、その間、電撃療法あるいは薬物療法、その他専門的生活指導のほか、退院後も精神医学的管理のもとになされる社会復帰のためのナイトホスピタルの施行等もうけ、最近は、右治療等により軽快しかなりの安定状態にあること、今後なお当分の間は精神医学的管理のもとに置かなければ既往からみて再発の危険がないとはいえないが、精神分裂病の欠陥状態にある者相応の能力に応じ要素的な意味での家庭生活を営むことは不可能ではないことが認められる。右認定を動かすに足りる証拠はない。民法第七七〇条第一項第四号は配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないばあいを離婚原因と定めているが、本件では、回復の見込なきものとは認めることができないから、右を離婚原因とする請求は理由がない。」
もっとも、民法第七七〇条第一項第五号を離婚原因とする離婚請求は認容できるとした。

長年会社人間的な生活をしてきた夫の定年後に、妻が求めた離婚請求が、婚姻関係の破綻が認められないとして棄却された。(東京高判平成13年1月18日)

【判旨】
夫は、妻の「立場を思いやるという心遣いに欠ける面があったことは否定できないものの、格別に婚姻関係を破綻させるような行為があったわけではない。」「諸事情を総合考慮すると、・・・婚姻関係がかんぜんに破綻しているとまで認めるのは相当でないというべき。」

双方の妥協し難い性格の相違から生ずる婚姻生活の継続的不和による破綻が、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとされた。(東京地判昭和59年10月17日)

【判旨】
「原被告間の同居期間は合計三年間弱であるのに対し、別居後すでに五年間余に及び、同居期間中も口論が絶えなかつたうえ、別居後も右のような状況に改善のきざしは認められず、しかも原告の離婚の意思が固いことからすると、原被告間の婚姻は破綻し、回復の見込がないものと認められる。確かに口論の原因は、通常の夫婦であれば、歩み寄り、諦めるなどして婚姻を継続することができるような些細な事柄にすぎない。しかし、これを原因に口論に至り、かつ争いを激化させる原因となっている原被告の前記認定の性格、言動が、容易に変化する見込のない以上、双方の妥協し難い性格の相違から生ずる婚姻生活の継続的不和による破綻は婚姻を継続する重大な事由に該当するというべきである。」

婚姻に際し性交不能を告知せず、婚姻後も性交不能が続いている場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる。(京都地判昭和62年5月12日)

【判旨】
「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたり性交渉のないことは、原則として、婚姻を継続し難い重大な事由に該るというべきである。」

有責配偶者からの離婚請求でも、著しく社会正義に反しない場合には認容されることがある。(最判昭和62年9月2日)

【判旨】
「思うに、婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもつて共同生活を営むことにあるから、夫婦の一方又は双方が既に右の意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至った場合には、当該婚姻は、もはや社会生活上の実質的基礎を失っているものというべきであり、かかる状態においてなお戸籍上だけの婚姻を存続させることは、かえって不自然であるということができよう。しかしながら、離婚は社会的・法的秩序としての婚姻を廃絶するものであるから、離婚請求は、正義・公平の観念、社会的倫理観に反するものであってはならないことは当然であって、この意味で離婚請求は、身分法をも包含する民法全体の指導理念たる信義誠実の原則に照らしても容認されうるものであることを要するものといわなければならない。
そこで、五号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において、当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては、有責配偶者の責任の態様・程度を考慮すべきであるが、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等が斟酌されなければならず、更には、時の経過とともに、これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し、また、これらの諸事情のもつ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないのである。
そうであってみれば、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないものと解するのが相当である。けだし、右のような場合には、もはや五号所定の事由に係る責任、相手方配偶者の離婚による精神的・社会的状態等は殊更に重視されるべきものでなく、また、相手方配偶者が離婚により被る経済的不利益は、本来、離婚と同時又は離婚後において請求することが認められている財産分与又は慰藉料により解決されるべきものであるからである。」

有責配偶者からの離婚請求において、8年間の別居が「相当の長期間に及んだもの」とされた。(最判平成2年11月8日)

【判旨】
「有責配偶者である夫からされた離婚請求において、夫が別居後の妻子の生活費を負担し、離婚請求について誠意があると認められる財産関係の清算の提案をしているなど判示の事情のあるときは、約8年の別居期間であっても、他に格別の事情のない限り、両当事者の年齢及び同居期間との対比に置いて別居期間が相当の長期に及んだと解すべきである。」

未成年の子がいる場合でも、諸事情により有責配偶者からの離婚請求が認容されることがある(最判平成6年2月8日)

【判旨】
「有責配偶者からされた離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって右請求を排斥すべきものではなく、前記の事情を総合的に考慮して右請求が信義誠実の原則に反するとはいえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。
これを本件についてみるのに、前記事実関係の下においては、上告人と被告人との婚姻関係は既に全く破綻しており民法七七〇条一項五号所定の事由があるといわざるを得ず、かつ、また被上告人が有責配偶者であることは明らかであるが、上告人が被上告人と別居してから原審の口頭弁論終結時(平成五年一月二〇日)までには既に一三年一一月余が経過し、双方の年齢や同居期間を考慮すると相当の長期間に及んでおり、被上告人の新たな生活関係の形成及び上告人の現在の行動等からは、もはや婚姻関係の回復を期待することは困難であるといわざるを得ず、それらのことからすると、婚姻関係を破綻せしめるに至った被上告人の責任及びこれによって上告人が被った前記婚姻後の諸事情を考慮しても、なお、今日においては、もはや、上告人の婚姻継続の意思及び離婚による上告人の精神的・社会的状態を殊更に重視して、被上告人の離婚請求を排斥するのは相当でない。」
「そして、現在では、上告人と被上告人間の四人の子のうち三人は成人して独立しており、残る三男Dは親の扶養を受ける高校二年生であって未成熟の子というべきであるが、同人は三歳の幼少時から一貫して上告人の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており、被上告人は上告人に毎月一五万円の送金をしてきた実績に照らしてDの養育にも無関心であったものではなく、被上告人の上告人に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると、未成熟子であるDの存在が本件請求の妨げになるということもできない。」

離婚の原因のない妻に1500万円の慰謝料が認められた。(東京高判平成元年11月22日)

【判旨】
「慰藉料の金額について検討するに、妻は破綻の原因を作出していないのに自己の意思に反して強制的に離婚させられ、夫が不貞の相手方たる甲子と法律上の婚姻ができる状態になることは妻に多大の精神的苦痛を与えることは明らかであり、夫が甲子と生活して2人の子供も生まれ、一家によって会社を経営し、相当程度の生活を営んでいることは前記のとおりであり、一方、妻は実兄の家に身を寄せ、今日まで単身生活を送ってきたこと、その他一切の事情を斜酌するならば、妻の精神的苦痛を慰藉するには1500万円をもって相当というべき」。

妻及び未成年の子のある男性と同棲した女性は、その子に対し、不法行為による損害賠償をする必要がない。(最判昭和54年3月30日)

【判旨】
「妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもった父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。けだし、父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によって行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被ったとしても、そのことと右女性の行為との間には相当因果関係がないものといわなければならないからである。」

婚姻関係が既に破綻している夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、他方の配偶者に対して不法行為責任を負わない。(最判平成8年3月26日)

【判旨】
甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。けだし、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。

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