2021.05.26

同族会社と親族不和のリスク

弁護士 吉利 浩美
 

日本の中小企業の多くは、親族が株主の大部分を占める同族会社です(組織形態も色々ありますが、ここでは株式会社を前提にします)。
親族のみが株主であれば、株主総会も事実上親族間の話し合いで済み、通常は役員も株主が占めますので経営陣と株主とで利害が対立することもなく、効率的に会社運営をできるメリットがあります。
 
しかし、忘れてはいけないのは、同族会社の株式は、例え非公開であっても、資産である、ということです。
この事実が顕在化するのが、良好であった親族関係に亀裂が入ったとき、離婚や相続のタイミングです。

会社経営と離婚

例えば、結婚後、夫婦が協力して会社を設立して双方が株式を保有し、夫が代表取締役、妻が平取締役であったとします。円満なときは何の問題もありませんが、いざ離婚となると、夫が株式の過半数ないし3分の2を有していない場合、妻の協力を得ない限りは会社としての意思決定をすることができません。離婚後、会社経営に携わるのが夫だけである場合、持株割合次第で妻の株式を買い取らざるを得ず、会社の財政状況(株式の価値)によっては莫大な現金が必要となります。
 
では、夫のみに株式を偏在しておけば良いかといえば、財産分与の問題が残ります。つまり、株式の名義が夫であっても、それは夫婦共有財産として財産分与の対象となります(夫名義の自宅が財産分与の対象となることと同じです)。株式の財政状況によっては、やはり、高額な対価が発生する可能性があります。
 
対策として、夫婦財産契約を締結して、会社株式を財産分与の対象から除外することが考えられますが、婚姻前に締結しない限り実効性がなく、現実的には使いづらい制度とはなっています。

会社経営と相続

次に、相続の場合を考えてみましょう。
 
例えば、父が株主を保有して自ら経営していた会社があり、父の相続が発生したとします。数人の子があり、父としてはそのうちの1人を後継者と考えていたとしても、株式は遺産分割の対象となってしまいます。
 
親族間が円満で、不平不満もなく後継者1人に株式を集中させる遺産分割が可能であれば何ら問題は生じません。
しかし、会社が保有している資産が多い場合、例えば不動産事業を経営していたり、個人名義の資産を節税のために会社名義にしていたりすると、会社株式の資産価値が膨らみます。そのような場合に一部の相続人から協力を得られないと、株式価値に応じた代償金を支払う必要が生じるのはもちろん、そもそも後継者が株式を取得すること自体を争う可能性もあります。
 
対策として、遺言により後継者に株式を相続させるよう意思表示しておくことが考えられます。ただし、この場合も他の相続人の遺留分を侵害することはできないので、中小企業経営承継円滑化法の遺留分に関する特例の使用を検討する方法があります。同特例は推定相続人全員の同意により、会社株式を遺留分の対象から除外すること等を可能にする制度です。

リスク回避のための専門家との関係

残念ながら、多くの場合、トラブルが泥沼化してから相談に訪れています。
トラブルの兆候がみられた段階で、早期に専門家に相談して対応することが、対立する親族含めて関係者全員の利益となります。
客観的に問題を整理した上で、円満解決への道筋をつけることが理想です。

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