2022.05.30
ボンド制度について
1. ボンド制度の概要
民事保全においては、被保全権利と保全の必要性は疎明で足りるとされており(民事保全法13条2項)、民事保全は暫定的な決定手続であるにもかかわらず債務者の権利を拘束することになるため、担保金を差し入れる必要があります。従前はこの担保金を支払うことができないために、民事保全の申立てを躊躇してしまうということがありました。しかし、令和元年7月1日から、「支払保証委託(ボンド)」という制度が利用可能になりました。
ボンド制度とは、債権者が保険会社に一定金額を支払うことで、当該保険会社が保証書を発行することで担保に代える制度のことです。例えば、これまで500万円の担保金が必要であったところが、26万円の保証金を保険会社に支払うことで、当該保険会社が保証書を発行して担保に代えることができます(詳細は、保険会社に確認することが必要です。)。ただし、保険会社に支払う26万円は担保金とは異なり、戻ってこないことになります。
2. ボンド制度の利用した所感
ボンド制度では、保険会社とのやりとりは郵送ではなくWEB上で出来るなど、ボンド制度を使うことでの時間的なロスがでないように工夫してあるように感じられました(もちろん超緊急の案件などでは、ボンド制度の利用については慎重な検討が必要です。)。そこで、特に、訴訟を提起すれば高額の請求の認容が予想されるが、訴訟の間に責任財産の隠匿が考えられるような事案で担保金の負担が難しいような場合には非常に有用性が高いと考えられます。例えば、離婚が成立すれば高額の財産分与が認められるが、離婚訴訟の係属中に財産分与対象財産の散逸が考えられる場合や高額の詐欺被害にあっており、現状では責任財産を把握しているが、訴訟係属中に責任財産の隠匿が予想される場合などに利用することが考えられます。
一方で、ボンド制度を利用することで担保金自体を支払わずに済んでも、不動産の仮差押えをするような場合には、不動産の登録免許税が必要であり、登録免許税まで立て替えてもらえるわけではありません。また、万一、不当な保全処分として損害賠償を支払う場合、本件会社が賠償金を支払うが(保証債務の履行)、保険会社からは求償されるといった点などには注意が必要だと感じました。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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