【執筆:斉藤健太郎】

 

目次

  1.  1. はじめに
  2.  2. 背景
  3.  3. 本コラムの目的
  4.  4. 修繕計画の法的枠組み
  5.  5. 建替えに関する法制度
  6.  6. まとめと今後の展望
  7.  7. 最後に

 

1. はじめに

マンションの修繕計画や建替えは、住民の生活環境を守るための重要なプロセスであり、関係法令の理解は不可欠です。本コラムでは、知っておくべき法制度の整理と実務的ポイントを解説します。

 

2. 背景

(1)マンションの高齢化

2022年末で、築40年以上のマンションは約125.7万戸存在しており、今後10年後には約2.1倍、20年後には3.5倍にまで増加する見込みです。

(国土交通省 マンションに関する統計・データ等による)

リンク:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html)

 

(2)法制度の複雑化

マンションに関する法制度は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替法)や区分所有法など多岐にわたり、適切な対応が求められます。

 

3. 本コラムの目的

(1)法的知識の整理

マンションの修繕・建替えに関する法的知識を理解し、これらの問題をかかえる管理組合等のクライアント

 

(2)実務対応の指針提供

法的な枠組みを踏まえた上で、具体的な修繕・建替えの対応策を提示します。

 

4. 修繕計画の法的枠組み

(1)修繕積立金の法的根拠

  • 修繕積立金の法的な位置づけ

実は、修繕積立金の集金については、「~法」というもの自体からは根拠を読み取れないため、各管理組合で定められている「管理規約」によって支払いが義務付けられることになります。したがって、そもそも管理規約を作成しているかどうかや、管理規約内に修繕積立金に関する規定が設けられているかどうかを確認する必要があります。

 

  • 修繕積立金の適正額と管理方法

修繕積立金の計算方法について正解があるわけではありませんが、国土交通省「マンション修繕積立金に関するガイドライン」記載の計算方法が代表的です。

その他、も費用の比較検討に有用です。

 

(2)長期修繕計画の必要性

  • 区分所有法における長期修繕計画の策定義務

長期修繕計画の作成は、国土交通省が定めたガイドラインに基づいて作成することが推奨されているものの、法律上の義務ではありません。もっとも、今後高齢化するマンションを適切に維持するためには計画を策定しておくことが望ましいといえるでしょう。

 

  • 実務での策定プロセスと留意点

国土交通省作成の「長期修繕計画ガイドライン」添付の、長期修繕計画標準様式の記載事項が参考になります。

(参考: 国土交通省「長期修繕計画標準様式 長期修繕計画作成ガイドライン 長期修繕計画作成ガイドラインコメント」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf

 

もっとも、同ガイドラインは、主として区分所有者が自ら居住する単棟型中高層のマンション(その他、いわゆるリゾートマンションや、一部に賃貸住宅を併設するマンション、マンション投資用マンション等)を対象としているため、団地型のマンションや住居以外の用途が複合しているマンション、海沿いなどの立地条件によって都度必要な内容を追加する必要があります。

 

  • 専門家による継続的なサポートの必要性

修繕計画は定期的な見直しが推奨されている等、継続的な管理が必要とされます。そのため、必要になったときにすぐ専門家に相談できる窓口を維持しておくことが大切になります。

 

5. 建替えに関する法制度

(1)マンション建替えに関する法的制度

代表的な法制度は以下のとおりです。

 

①区分所有法

 建替え決議の為の要件が定められています

 

②マンションの建替え等の円滑化に関する法律(マンション建替え法)

 建替え決議完了後の事業遂行方法について定められています。

 

(2)建替え決議の要件

  • 区分所有法に基づく建替え決議の要件と手続き

集会の2ヶ月以上前

集会招集の通知(法62条4・5項)

集会の1ヶ月以上前

説明会の開催(法62条6・7項)

 

集会の開催(建替え決議)(法62条1~3項)

※区分所有者及び議決権の各4/5以上の賛成が必要

(非賛成者に対して)

建替えに参加するかどうか否かの回答の催告(法63条)

催告を受けた日から2ヶ月以内

参加するか否かの回答(法63法3項)

回答期限から2ヶ月以内

参加を回答しない者に売渡し請求(法63条5項)

(全員同意の状態)

建物の取り壊し

※マンション建替え法に基づく場合には、事業内容によって組合設立認可(組合施行の場合)、事業計画認可、権利変換計画の策定等が続きます。

 

(3)建替えを巡るトラブルとその解決法

  • 建替え反対者への対応

建替事業は全員が建替え合意者という建前で進行することになります(組合施行の場合)。したがって、建替え反対者がいる場合には、建替えに賛成してもらうよう働きかけるか、賛成されない場合には売渡し請求(区分所有法63条)等の法的手続きによることになります。

 

  • 調停や裁判を視野に入れた解決方法

売渡請求をしたにも関わらず、建物を明け渡さないなどのトラブルがあった場合には、調停・裁判による法的手続きに則った解決も視野にいれる必要があります。

 

6. まとめと今後の展望

(1)法制度の理解の重要性

法制度の理解を深めることで、適切な対応が可能となります。特にマンションの管理及び建替えに関する手続は、細かく時期が定められていることがあり、時間は巻き戻せないため、タイムスケジュールには気を使って進めていく必要があります。

 

(2)今後の動向と不動産業者の役割

法改正の動向を注視し、柔軟に対応するための心構えが必要です。

 

7. 当事務所のサポート体制の紹介

マンションの修繕や建替えは、多数の利害関係人が存在すること、法的選択肢が多様かつ複雑であること、長期的な視点で手続きを進行させる必要があることから、継続的な弁護士の支援が必要とされる事案も少なくありません。

当事務所は、1972年の創業以来、不動産に関係する法律問題を数多く扱っており、解決実績も多数ございます。また、当事務所には税理士や司法書士も所属しておりますので、税務問題や登記手続きについても、ワンストップサービスで対応可能です。マンション修繕計画策定や建替えについてご不明な点がありましたらぜひ当事務所にご相談ください。

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