2024.09.11
保釈請求を成功させるために知っておきたい家族の重要な役割
虎ノ門法律経済事務所 西宮支店 弁護士 亀井 瑞邑
刑事事件で被疑者が逮捕・勾留され、起訴された場合、保釈という制度を利用することで、被告人は一時的に身体拘束から解放され、裁判を待つ間、外で生活を送ることができる可能性があります。
しかし、保釈が認められるためには、単に弁護士が手続を進めるだけでは不十分で、家族や親しい人々の協力が不可欠です。
本コラムでは、弁護士の目線で、保釈を請求する際の家族の役割やその意義について説明します。
目次
1. 保釈とは何か?
保釈とは、刑事事件で逮捕・勾留され、起訴されている被告人が一時的に解放される制度です。裁判所が保釈を許可すると、保釈保証金を担保として納付し、その後に釈放されるのが通常の流れです。
ただし、保釈が認められるかどうかは裁判所の判断に委ねられ、弁護人や被告人としては、単に「罪を犯していない」と主張するのではなく、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことといった事情を示す必要があります。
保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
2. 家族の役割がなぜ重要か
保釈請求を成功させるためには、被告人本人の生活環境や家族による監督状況が重視されます。家族や友人のサポートがあることで、裁判所に対して「被告人が逃亡するおそれがない」「証拠を隠すおそれもない」「適切な環境で再び生活できる」といった信頼を得ることができるため、保釈が認められる可能性が高まります。
(1) 監督者としての役割
保釈を請求する場面で、家族や友人は「身元引受人」または「監督者」としての役割を果たすことが期待されています。身元引受人とは、被告人が保釈された後、適切な行動を取るよう見守り、被告人を監督する責任を負う人となります。具体的には、次のようなことが求められます。
(2) 裁判所への出廷を確実にサポートする
被告人が決して逃亡しないよう、出廷日を確認したり、公判に向けて、適切な指示をします。
(3) 被告人の生活を安定させる環境づくり
住居を提供したり、就労への必要なサポートを行い、被告人が安定した生活を送れる環境を整えることもあります。例えば、身元引受人を会社上司が行う場合には、会社寮での生活を支えるといった協力をしていただきます。被告人の犯行に病気といった要因があるのであれば、裁判までに通院させ、治療を受けさせるように促すことも求められます。
(4) 再犯や罪証隠滅のリスクを防ぐための監督
被告人が保釈条件で定めたルール(指定条件)を遵守し、また関係者(特に被害者)への接触を控えるなど、適切な生活を送るよう監督することも重要です。
3. 保釈保証金とそのサポート
保釈が認められるためには、保釈保証金の納付が条件となります。そのため、保釈を申請するにあたっては、事前準備として、保釈保証金を準備しなければなりません。
この金額は、罪名や犯罪事実、被告人の経済状況といった事案に応じて異なりますが、被告人が勾留されている以上、家族や友人が資金を準備するケースが多いですが金200万円前後になることが多いです。
このように、保釈保証金の準備に協力することも、家族や友人の重要な役割の一つといえます。
なお、仮に保釈保証金の準備が難しい場合には、「 日本保釈支援協会」といった機関を利用することも検討してみてください。保釈支援協会への申込みは、担当弁護士ではなく、ご自身で行うと、スムーズに審査がすすみます。
4. 保釈請求を行うにあたっては、捜査状況に注意する
家族や友人によるサポートの結果、裁判所が保釈許可決定を行い、保釈保証金を準備したとしても、注意が必要です。場合によっては、検察官は余罪で再逮捕をしてくるかもしれません。再逮捕されてしまうと、せっかく保釈許可決定が出ても逮捕・勾留されてしまうこととなります。
また、検察官は、保釈許可決定自体に準抗告・抗告をしてくるかもしれません。準抗告・抗告がされると、再度、この保釈請求を認めるかどうかについて、上級審で判断されることとなります。
したがって、保釈請求を行うにあたっては、再逮捕の予定が無いかなど、検察官による捜査状況を十分に把握することが必要です。そして、万が一にも保釈許可決定が上級審で覆されることのないように、十分に準備したうえで行うことが望ましいといえます。
5. 家族ができること
保釈を成功させるために、家族や友人が行うべき具体的な行動は以下の通りです。
(1) 弁護士との連携
まず、弁護士と密に連携し、被告人が保釈されるために必要な情報を提供します。なぜ被告人がこのような犯行に及んだのか、被告人と面会を通じてどのように考えるのか、被告人の釈放が認められた場合に、どのような生活を送らせることができるかを具体的に説明することが望ましいです。
その際、弁護士には、電話よりも、手紙やメールで連絡することが望ましいです。というのも、手紙やメールであれば、保釈請求やその後の裁判手続きにおいて、資料・証拠として使うことができるからです。
(2) 陳述書の作成
被告人の家族・友人として、被告人の犯行をどのように思うか、その上で、被告人を今後どのように支えていきたいと考えているか、記載しましょう。
場合によっては、被告人が万が一にも逃亡しないように手当をした旨(例えば、就労先への送り迎えをすることや、GPS機能を利用することなど)といった内容を記載することも考えられます。
大切なことは、裁判官を説得するには、どのような要素があれば良いかを考えることです。具体的な事案の特質に応じて、ご自身で出来る内容で、陳述書を作成しましょう。
(3) 裁判所からの信頼を掴みとる
このように家族が弁護士に協力し、保釈を希望する姿勢を示すことで、裁判所からの信頼を勝ち取ることができます。
したがって、悩みながら「身元引受人」となることは、お勧めしません。
突然家族が逮捕されてしまい、動揺し、被告人への協力に躊躇される方もいらっしゃいますが、そのような不安は、なるべく早めに弁護士に相談してください。
また、警察署への面会に行き、被告人と話すことで、お気持ちが固まる方も多くおられます。
保釈に協力するかどうかを悩まれおられるのであれば、十分に納得されたうえで、協力されることをおすすめします。
そして、お悩みについて納得ができて、保釈請求に協力できる、被告人の支援を出来るという状態なのであれば、ぜひ担当弁護士にその旨を伝えてください。
6. まとめ
保釈請求には、弁護士の対応に加え、家族や友人によるサポートが重要です。
身元引受人としての監督や保釈後の生活支援、さらには保釈保証金の準備など、さまざまな面で家族のサポートが必要です。
保釈は、たとえ有罪となる事案であっても、今後の裁判で用いる証拠(示談、就労、通院、社会とのかかわり)との関係でも極めて重要です。
上記のとおり、保釈請求が認められるかどうかは、検察官による準抗告・抗告といった反論が見込まれることもあって、むずかしい局面も多々あります。
担当弁護士から「身元引受人」や「陳述書」、「本人確認書類」、「保釈保証金」といった資料の準備を求められたら、ぜひ協力をしてください。
被疑者や被告人が安心して裁判に向き合えるよう、家族としてできる限りの協力をしていくことが重要です。
保釈についてのお悩みがある場合は、ぜひ一度、お問い合わせください。
信頼できる弁護士と共に対応策を考え、最善の結果を目指しましょう。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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