2025.06.02

遺産の相続割合の決め方とは?法定相続割合から注意が必要なケースまで紹介

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パートナー常務執行役員・弁護士
加唐 健介Kensuke Kagara
東京弁護士会
神奈川県
子どもと遊ぶこと
一橋大学法学部卒業 一橋大学法科大学院修了
ご相談に来られる方々の悩みを共有し、信頼関係を築きながら、一人一人のご希望に沿った解決をしていくことで、皆様のお役に立てることを大変嬉しく思っております。ご依頼者様の希望が実現できたときの感慨はひとしおです。
不動産・労働問題に精通した弁護士。一橋大学法科大学院の学習アドバイザーを務めていたほか、東京弁護士会の各種委員を歴任。
執筆・講演実績も豊富で、実務家向け書籍や新聞・専門誌への寄稿も多数。医療経営士3級の資格も保有。

弁護士 加唐 健介
 
相続が発生した際、誰がどの程度の割合で遺産を受け取るのかは、大きな関心事となります。相続割合には法律上定められた「法定相続割合」がありますが、遺言書や相続人間の協議によって異なる割合で分割されることもあります。
また、相続放棄や代襲相続といったケースでは、想定と異なる相続関係となる場合もあるため、注意が必要です。
本コラムでは、相続の割合の基本的な決め方とともに、特に注意すべきポイントについて、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
 

1. 遺産相続の割合の決め方とは?

遺産相続の割合は、法定相続分・遺言書・遺産分割協議のいずれかの方法によって決まります。

(1) 法定相続分

被相続人が遺言を残していない場合、民法に定められた法定相続割合に従って遺産が分割されます(民法第900条)。
たとえば、被相続人に配偶者と子がいる場合、配偶者が2分の1、子が残りの2分の1を等分で相続します。子が2人であれば、それぞれ4分の1ずつとなります。子がいない場合、配偶者と直系尊属(両親など)が相続人となり、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1を相続します。兄弟姉妹が相続人となる場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
このように、相続人の組み合わせによって割合が異なりますので、具体的な状況に応じた確認が重要です。

(2) 遺言書

遺言書がある場合、原則としてその内容に従って遺産分割が行われます(民法第902条)。たとえば、「全財産を長男に相続させる」といった記載があれば、他の相続人の法定相続分にかかわらず、その内容が優先されます。
ただし、遺言によっても、遺留分(法定相続人の最低限の取り分)を侵害することはできません(民法第1046条)。たとえば、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分が認められており、侵害された場合には遺留分侵害額請求を行うことができます。
遺言書には、自筆証書遺言(民法第968条)や公正証書遺言(民法第969条)など種類に応じて法定された要件があり、法的効力を確保するためには形式面にも注意が必要です。

(3) 遺産分割協議

相続人全員が合意すれば、法定相続割合にとらわれずに自由に遺産を分けることができます(民法第907条)。たとえば、特定の不動産を長女が相続する代わりに、長男が預金を多めに受け取るといった分け方も可能です。
ただし、遺産分割協議は、相続人全員の参加と合意が必要で、一人でも反対すれば協議は成立しません。また、相続人の中に未成年者がいる場合には特別代理人の選任が必要となるなど、手続面での注意も必要です。

2. 法定相続人とは

相続が発生した際に、法律上遺産を相続する権利を持つ人を「法定相続人」といいます(民法第887条以下)。第一順位は被相続人の子(子が亡くなっている場合はその子=孫が代襲相続します(民法第887条2項)、次に直系尊属(父母や祖父母など(民法第889条))、その次に兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子=甥姪が代襲相続(同条2項))です。
配偶者は常に相続人となり、他の相続人とともに財産を分け合います(民法第890条)。なお、婚姻の届出をしていない内縁の配偶者は、原則として法定相続人には含まれません(相続財産を取得するには、特別縁故者の申立て(民法第958条の2)など別途手続が必要です)。

3. まとめ

遺産の相続割合は、法定相続分・遺言書・遺産分割協議のいずれかの方法により決まりますが、具体的なケースによって注意点が異なります。遺留分や代襲相続、相続放棄などの制度を正しく理解することが、トラブルを避けるうえで重要です。複雑な事情を抱える場合は、専門家である弁護士へのご相談をおすすめします。

 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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