2022.06.06

相続が発生したとき留意すべき4つの時点

 
親族が亡くなり、葬儀、遺品整理、遺産分割など慌ただしいなかも、気をつけるべき4つの「時点」があります。

1. 熟慮期間 3ヶ月

相続発生を知ってから原則として3ヶ月以内に、相続人は相続方法の選択をする必要があり、この選択期間を「熟慮期間」といいます。

相続方法には、単純相続限定承認相続放棄の3パターンがあります。

単純承認とは、被相続人(亡くなった方)のプラスの財産もマイナスの財産=債務(借金など)もすべてそのまま、相続分どおりに承継する方法です。
限定承認とは、被相続人のプラスの財産の範囲内で債務を弁済する責任を負うと言う、言わば、限定的な相続方法です。
相続放棄とは、被相続人のプラスの財産も債務もすべてを手放し、相続人でなかったことになる方法です。

 

熟慮期間を何も手続きせずに経過してしまうと、単純承認をしたとみなされます。
つまり、多額の借金があり、相続放棄したいのであれば、急いで財産や債務の調査を行い、手続きする必要があります。
なお、熟慮期間は裁判所で手続きをすれば延長することも可能ですので、調査に時間がかかるようであれば、検討が有用です。

2. 準確定申告期限 4ヶ月

相続発生を知った日の翌日から4ヶ月以内に、被相続人が亡くなった年の1月1日から相続発生日までの間の所得について税務申告を行う必要があり、これを「準確定申告」といいます。
この申告をする義務があるのは法定相続人(包括受遺者を含む)です。

準確定申告は誰もが行う必要があるわけではありまけん。
例えば、被相続人に多額の医療費や寄付金があり、申告すれば還付の可能性がある場合は、申告のメリットがあります。
他方、被相続人が事業をしており、収入がある場合は、所得税納税のために申告が必要です。
忘れがちですが、賃貸不動産による賃料収入があり、遺産分割が未了である場合でも同様ですので、注意が必要です。

3. 相続税申告 10ヶ月

相続発生を知った日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の遺産を取得した相続人等は、相続税申告をする必要があります。

4. 遺留分の侵害額請求権 1年

遺言や生前贈与により遺留分が侵害された相続人は、遺留分侵害額請求をして、遺言や生前贈与で利益を受けた者に対して、金銭の支払いを請求することができます。
この請求権は、相続発生及び遺留分侵害の事実を知ってから1年間で原則として時効により消滅してしまいます。
そのため、遺留分侵害の事実を知った場合には、ひとまず、内容証明など記録に残る形で遺留分侵害額請求権を行使しておくことが肝要です。

 

 

以上のように、法律では様々な視点から「時点」が決まっています。
ただ実際は、相続人同士の話し合いがうまくまとまらなかったり、今までの事実経過の積み重ねなどがあり、法律どおりに進めることが難しい場合もあります。

弁護士に相談することで、自分の置かれた状況や問題点を整理したり、必要に応じて弁護士を間に入れることで、冷静に物事を進めていくべき事案もあります。
「何かおかしいな」と思ったら、まずは相談されてはいかがでしょうか。
 
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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