2022.06.27

もしかして遺産を隠されてる? ~遺産調査の方法とは~

 

1. はじめに:相続人の遺産を隠されているかもと思ったら

例えば、両親が亡くなり相続が発生したとき、相続人の間で遺産に関する情報の不均衡が生じることがよくあります。典型的な場合は、相続人の内一人が被相続人と共同で生活を送っていた場合、被相続人の財産を事実上管理していた場合に、その相続人のみが遺産の全容を把握しており、他の相続人にとってはどのような遺産が存在するのか不明確であるという場合です。
 
このような場合に、遺産を把握していない相続人が、遺産の一部を隠されたまま遺産分割協議を進めてしまうと、本来取得できたはずの遺産を取得できずに損を被ってしまう可能性があります。
 
そこで、遺産分割協議にあたっては、まずはどのような遺産が存在するのかを明確にすること(遺産範囲の確定)が重要となってきます。では、遺産の情報を持たない相続人が(隠された)遺産を見つけ出すにはどうすればいいのでしょうか。

2. 遺産を見つける方法1:相手に資料を提示させる

遺産の範囲を明らかにするためにまず取りうる手段は、情報を握っている相続人に資料を提示させることです。その際は、相手の口頭での説明を鵜呑みにするのではなく、客観的な資料の提示を求めましょう。代表的な資料は、相続税申告書です。相続税申告書は、行政に対して提出する資料になるため、信用性が高く、遺産が網羅的に記載されているため、まずは相続税申告書の提示を求めましょう。
 
もっとも、相続税申告書が作成されていない場合もありますので、その場合は財産ごとに個別に資料の提示を求めることになります。例えば、不動産の有無を調べるためには固定資産税の納税通知書、預貯金を調べるためには被相続人の通帳、被相続人の収入(賃料、配当等)を調べるためには確定申告書の開示等を求めます。
 
もっとも、これらの方法はあくまで相手が任意に資料の開示に応じてくれた場合にのみ有効な手段です。すなわち、相手が資料を隠したり、何らかの理由で資料の開示を拒んだ場合に、これを強制的に提示させることはできません。このような場合は、次にあげるように自力で遺産を調査する必要性が出てきます。

3. 遺産を見つける方法2:自力で遺産を調べる

自力で遺産を調べる方法は対象となる遺産の種類により様々です。そこで、今回は一般的な相続において遺産の大きな部分を占める、①不動産と②預貯金についての調べ方をご紹介します。
 
不動産については、名寄帳を取得する方法が有効です。名寄帳には、被相続人名義の不動産が一覧表としてまとめられているもので、不動産所在地の市区町村役場で入手することができます。そのため、どこの市区町村に不動産が存在するかわからない場合は探すことが困難ではありますが、反面、ある程度不動産の所在地にあたりがついていれば探しやすいというメリットがあります。その他、被相続人への郵便物をある程度把握できる立場にあるのならば、固定資産税の納税通知書等を調べることで、被相続人がどこに不動産を所持しているか判明することもあります。
 
預貯金については、金融機関から残高証明及び取引明細書を取得することが有効です。特に大手の金融機関であれば必ずしも口座の存在する支店名までわからなくとも一括で調べられることが多いので、情報が少ない場合はひとまず大手の金融機関から上記の資料を取得することも多々あります。一方、地方銀行においては必ずしも支店まで一括に調べられるとは限らないので、その場合は被相続人の生前の住所等から被相続人が使用していたと思われる金融機関にあたりをつけて調査をすることになります。取引明細書は最大で過去10年分ほどの口座における取引履歴を取得できるので、この取引履歴を丹念におっていくことで、あらたな財産(有価証券及び保険等)が見つかる場合や、財産を管理している相続人が使い込んだと疑われるような使途不明金が見つかる場合などがあります。

4. 最後に

冒頭にも触れましたが、遺産分割協議においては、まずどのような遺産が存在するのかを確定させることが大切なプロセスになります。あるはずの遺産が見つからなければ、当然ながらその遺産を分けることはできず、ひょっとしたら相続人の誰かにこっそり取得をされて損を被ってしまうかもしれません。
 
そのため、私が担当している案件においても、被相続人の遺産が多岐にわたり、かつ、相続人間に情報格差が存在するのに情報が十分に開示されない場合などは、ときに1年近くもの時間を費やして遺産を調査するような場合もございます。
遺産調査にお悩みの方は、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。
 
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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