2021.09.24

数次相続があった場合の相続税

1. 数次相続とは?

被相続人が亡くなった後、相続人間での遺産分割協議が完了しないうちに相続人が亡くなってしまい、次の相続が開始されることを「数次(すうじ)相続」といいます。

数次相続の事例

例えば、次のようなケースが該当します。
 
(一次相続)
 父Aが死亡
 相続人は母B、長男C、二男Dの3名
(二次相続)
 父Aに関する遺産分割協議は未了の状況で、母Bが死亡
 相続人は長男C、二男Dの2名
 
このとき、遺産分割協議自体は父A、母Bの分をまとめて行うことになるものと思われますが、仮に相続税の申告が必要な場合に注意すべき事項について、以下で説明します。

2. 相続税申告上の注意点

数次相続が発生した場合、相続税申告にあたっての注意点を以下に記載します。
次の事例をもとに確認していきます。

(1) 申告・納税義務の承継

相続税法等の法令上、申告義務のある者がその申告書を提出しないで亡くなった場合には、その相続人が申告・納税義務を承継することとされています。
上の事例の場合で言えば、母Bが父Aの相続について相続税申告をすべきなのであれば、長男C並びに次男Dが母Bの義務を承継し、申告・納税する必要があります。

(2) 申告・納税期限の考え方

通常の相続税の申告期限は、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
上の事例の場合、父Aに関する相続税の申告期限は令和3年12月1日です。
一方で、母Bは申告書を提出しないまま亡くなりましたが、長男Cと二男Dが母Bの申告義務を承継して提出すべき申告書の申告期限は、母Bについて相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内(つまり、令和4年3月1日)になります。
なお、長男Cと二男Dが父Aの相続人として提出する申告書の申告期限は令和3年12月1日ですので、この点についても注意が必要です。

(3) 基礎控除額の計算

相続税を計算するときに、相続税を課税しない範囲である基礎控除額の計算は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で行いますが、数次相続の場合であっても法定相続人の数を増やすことはしません。
上の事例の場合、父Aに関する相続税の基礎控除額は4,800万円(=3,000万円+600万円×3(母B、長男C、二男D))です。

(4) 相続税額のシミュレーションが必要なことも

数次相続が生じた場合、遺産分割協議はそれぞれの相続の分をまとめて行うかもしれませんが、相続税はそれぞれの相続「ごと」で考えます。
つまり上の事例の場合、父Aの相続の場合は父Aの遺産に対して、母Bの相続の場合は母Bの遺産(父Aの相続に伴い母Bが取得することになる遺産を含む)に対して相続税の申告要否を含めて検討することになります。
また、遺産分割協議の結果いかんでは相続税の納税額が変化することも十分考えられますので、相続税の申告が必要な場合は、遺産分割の仕方に応じたシミュレーションを事前に行うのも有益と思われます。

3. 最後に

上記で記載する以外にも相続税申告上、注意をしなければいけない事項はあります。
数次相続が発生した場合は遺産分割や遺産分割協議書の作成方法を含め、通常の相続とは異なる事項に注意を払う必要があると考えられますので、事が複雑になる前に弁護士や税理士等の専門家に相談されることをお勧めします。
 
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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