2022.09.26

遺産分割協議の注意点とは

弁護士 三浦 裕和
 

1. はじめに

相続が発生したとき、相続人の一人が中心になって、遺産分割が進められることがよくあります。
このとき、遺産の範囲や生前贈与、特別受益について、相続人全員が十分に話し合い、理解・納得したうえで遺産分割協議書を作成するのであれば、基本的には問題は発生しません。
 
その一方で、十分に理解・納得していないにもかかわらず、「銀行からお金を引き下ろす必要がある」「相続税の申告が近いから」などと説明を受けて、内容を十分に検討することなく、安易に遺産分割協議書にサインをされてしまう方もいらっしゃいます。
 
しかし、一度、遺産分割協議書にサインをしてしまうと、後でその遺産分割をひっくり返すのは、とても困難です。
そのため、後になって後悔をしないようにするため、遺産分割の際、確認しておきたい事項についてご説明します。

2. 注意点①:遺産の範囲

通常、遺産分割を行うときは、「財産目録」という財産の一覧表を作成し、遺産の範囲を明らかにしたうえで、遺産分割を行います。
例えば、預貯金があれば、その銀行名・口座番号・残高を、不動産があれば、その地番や面積等を明確にします。
少なくとも、遺産の範囲が分からない状態で遺産分割協議書にサインをするのはお勧めできません。
 
また、遺産の範囲に預貯金が含まれる場合、「財産目録」から読み取ることができるのは、
被相続人が亡くなった時点の残高だけです。
そのため、被相続人が亡くなる前に、誰かが預貯金を引き下ろしていても、財産目録からは判断することができません。
誰かが被相続人の財産を引き下ろしている疑いがある場合は、被相続人の記帳された通帳や、金融機関の取引履歴も確認しましょう。
 
(遺産の範囲の調査についてはこちら記事をご確認下さい。「もしかして遺産を隠されている?~遺産調査の方法とは~」)

3. 注意点②:遺産の評価

遺産の中に、不動産がある場合、その評価額には注意が必要です。
 
不動産には、「固定資産税評価額」「相続税評価額」「実勢価格」「公示地価」など、複数の評価方法があります。
相続税申告書に記載する不動産の価額は「相続税評価額」ですが、裁判所で遺産分割を行う場合は、実際に取引をするときの価格、すなわち「実勢価格」で不動産を評価します。
 
相続税評価額は、実勢価格よりも安価(特に収益物件)になることが一般的です。
そのため、実勢価格より安い不動産評価を基準に遺産の総額が計算され、自分以外の相続人が不動産を取得する場合には、裁判所に遺産分割をする場合と比較して、取得できる預貯金等の財産が少なくなってしまう可能性があります。
 
また、亡くなれた方が会社を経営していて、自社株を持っていた場合も、その株式の価額の評価は非常に難しいため、注意が必要です。

4. 注意点③:特別受益

相続人の一人が、被相続人から生前贈与や遺贈を受けていた場合、その贈与を相続分の前渡しとみて、遺産分割のときにその金額を持ち戻して計算することができます。
 
「特別受益」にあたるためにはいくつか要件があり、被相続人からの贈与のすべてが特別受益として考慮できるわけではありませんが、自宅の建築資金の援助などがあると、金額が大きく、遺産分割に大きな影響を与えることもありますので、確認が必要です。

5. 注意点④:寄与分

相続人の一人が、「被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与」をしていた場合、その事実を遺産分割の際、考慮することができます。
 
法律上、「特別の寄与」の態様の一つとして、「被相続人の療養看護」があげられていますが、一般的な療養看護の範囲では、親子間の扶養義務の範囲として、「特別の寄与」には該当しないと判断されることが多いです。
 
そのため、寄与分が認められるためには、ややハードルは高いですが、「特別の寄与」に該当する事情がある場合は、確認が必要です。

6. 終わりに

ここまで確認すべき事項をあげてきましたが、不動産の評価や特別受益、寄与分は、遺産分割の際、必ず考慮しなくてはならない、というものではありません。
実際、親族間の問題のため、細かな話し合いをしないまま、遺産分割協議を完了し、それで全く問題が起こらないということもあります。
 
しかし、最初に記載したように、一度遺産分割協議書にサインをして、遺産分割を完了させてしまうと、後からひっくり返すことは困難です。
 
遺産分割の際、何か納得がいかない事情があれば、まずは相続問題に詳しい弁護士にご相談ください。
 
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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