2025.10.09

西宮市で相続が発生したら―西宮市での相続手続ガイド|地元弁護士が解説!

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西宮支店長・弁護士
亀井 瑞邑Miyu Kamei
事務所の注力分野である企業法務や遺産相続分野、不動産分野に加えて、債権の回収にも力を入れています。
ご依頼者様の権利擁護・権利実現のため、尽力します。

弁護士 亀井 瑞邑
 

1. はじめに

大切なご家族を亡くされた後、悲しみの中で立ち止まる間もなく、相続手続は始まります。
「何から始めればよいのか」
「銀行や司法書士に頼めば十分なのか」
「遺産分割でもめそうで不安」
 
——多くの方が、こうした疑問を抱えたまま期限に追われてしまいます。
 
相続は 期限がある手続話し合いが必要な手続 が入り交じるため、最初の選択で将来の負担やトラブルの有無が大きく変わります。
 
この記事では、西宮市における相続手続の流れ、関係する公的機関の情報、地域特有の注意点について、西宮市に所在の虎ノ門法律経済事務所西宮支店の弁護士が解説します。
 
なお、相続手続に関する各種手続の期限については、当事務所が執筆したこちらのコラム(「遺産相続の手続の期限とは?過ぎた場合の対応方法や期限までに何をすべきかを弁護士が解説」)もあわせてご確認ください。

2. 相続が発生したら最初にすべきこと

・死亡届の提出(7日以内)

提出先は、亡くなられた方の本籍地、死亡地、または届出人の所在地の市区町村です。葬儀社がご遺族に代わって提出される場合が多いです。
西宮市役所に死亡届を提出して約3開庁日程度で、戸籍や住民票に記載されます。

・西宮市の「おくやみコーナーのご案内」

死亡届の提出に続いて、健康保険や年金手続、福祉医療などの手続を行います。担当部署ごとに手続を行う必要があります。
西宮市では、令和5年10月から、市役所における手続を案内する「おくやみコーナー」を設置しています。
市役所の手続でお困りの際には、一度問い合わせをしてみてください。

・金融機関への連絡

亡くなられた方が口座を持っておられたら、金融機関にはすみやかに連絡をしましょう。口座を凍結することで、預金を引き出すことはできなくなります。
葬儀費用の支出などのために凍結される前に口座から預金を引き出す方がおられますが、後のトラブルに発展する可能性が高く、控えるべきでしょう。
なお、口座が凍結されたとしても、相続人であれば、一定額(令和7年時点で、法務省令にて最大で150万円とされています。)であれば単独で引き出すことができます(民法909条の2)。

民法909条の2に基づく遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは、亡くなられた方の預金(相続預金)が遺産分割の対象となる場合、たとえ遺産分割が終了する前であっても、各相続人が一定の範囲で預金の払戻しを受けることができる、という制度です。

ご不安であれば、預金を引き出す前に弁護士に相談をしてください。

3. 相続人の確定

戸籍謄本を取得し、相続人を確定します。亡くなられた方(専門用語で「被相続人」といいます。)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
広域交付制度を利用できれば、最寄りの自治体で戸籍謄本を取得することができます。
なお、広域交付制度はコンピュータ化されていない戸籍等を取得することや、代理人・被相続人のきょうだいの利用はできません。
戸籍謄本を取得する際には、弁護士や司法書士、行政書士といった法律の専門家に相談をすべきでしょう。

法定相続情報証明制度について
 
戸籍の収集が完了した際には、これを法定相続情報一覧図としておくと便利です。
相続手続では、相続人を確定していることを示すために、戸籍謄本の束を手続の都度、提出することが求められます。例えば、複数の銀行で口座を持っておられる場合には、銀行ごとに戸籍謄本の束を提出する必要がありました。戸籍謄
本の束は1つしかないことが通常ですので、1つの手続が完了しないと次の手続が進まないということにもなります。
 
そこで、平成29年に、法定相続情報証明制度が創設されました。法定相続情報一覧図では、相続関係説明図を記載した所定の書式と戸籍謄本等を法務局に提出すれば、相続人が、その説明図のとおりであることを法務局が証明する制度です。これにより、戸籍謄本の束を何度も提出する手間が省ける他、法定相続情報一覧図を複数枚取得しておけば、相続手続を同時に完了させることもできます。
 
詳しくは、法務局でお問い合わせください(西宮市であれば、西宮市浜町に所在の神戸地方法務局西宮支局や神戸地方法務局(本局)が便利です。)。

韓国戸籍の入手について
 
被相続人が韓国国籍の場合もあります。
従来の韓国戸籍は家父長制による「家」を基準としたものでしたが、すでに2008年に韓国戸籍は廃止されており、現在では「基本証明書」「家族関係証明書」などが発行されます。
日本の市役所は韓国戸籍を管理していないため、相続手続を実施するに際しては韓国領事館で戸籍を入手する必要があります。
一般的には、被相続人の基本証明書、家族関係証明書、婚姻関係証明書、出生からの除籍謄本、そしてそれらの翻訳文が必要です。
西宮市近辺であれば、駐大阪韓国領事館で申請をすると簡便です。

4. 遺言書の確認

遺言書には、公正証書遺言や、自筆証書遺言などいくつか種類があります。
自筆証書遺言の場合には、保管者やこれを発見した者は遺言書の「検認」(民法1004条)を裁判所に請求する必要があります。西宮市であれば、神戸家庭裁判所尼崎支部に請求します。「検認」を怠った場合には、過料として行政罰の対象となります(民法1005条)。手続でお困りの際には、弁護人や司法書士、行政書士といった専門家に相談をしましょう。
なお、遺言書を偽造・隠匿した場合には相続欠格事由(民法891条)に該当するほか、刑事罰の対象にもなることもあります。
このような場合にはすみやかに弁護士に相談しましょう。

遺言執行業務を弁護士以外に依頼している場合の注意点
 
司法書士や税理士、信託銀行、その他民間資格者などが遺言執行業務を実施することもありますが、遺言の内容で解釈に疑義が生じたり、遺言執行に関して受遺者・相続人間に紛争が発生しうる場合、弁護士法72条が弁護士以外の法律事務を原則として禁止しているため、対応をすることができなくなるので、遺言執行者への就職を辞退します。
 
遺言執行者が就職を辞退した場合の遺言の解釈は、困難を伴います。その結果、遺言者の遺言内容を実現することができなくなることも発生しています。

5. 遺産の調査と相続放棄の検討

西宮市内には、みなと銀行、三井住友銀行、りそな銀行、三菱UFJ銀行など多くの金融機関があります。被相続人がどの金融機関を利用していたか不明な場合は、通帳やキャッシュカード、郵便物などから手がかりを探しましょう。
被相続人の遺産のうち、借金といった負債が多い場合には、相続放棄を検討しましょう。相続放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったこと」を知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に対して行う必要があります(民法915条、938条)。西宮市で相続放棄を行うには、神戸家庭裁判所尼崎支部に対して行います。
3カ月という期限は想像以上に短く、なるべく早く弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談をすべきでしょう。

相続を放棄するかどうかが決めきれない場合には・・・判断する期間の伸ばしてもらえる!
 
相続人となった場合には、この3カ月の期間(専門用語で「熟慮期間」といいます。)の間に、相続放棄をするかどうかを決めなければなりません。相続放棄をしないのであれば、相続を放棄していないものとして、相続人の権利・義務を承継することとなります。
 
したがって、この3カ月の間に、被相続人の財産状況を調査することが求められます。
 
もっとも、各種資料の収集などで時間を要することが見込まれる(例えば、CICや JICC、全国銀行個人信用情報センターに対して信用情報開示をするのであれば、必要資料の収集を含めて1カ月以上を必要とします。)のであれば、この3カ月の「熟慮期間の伸長」を家庭裁判所に申し立てることで、時間に余裕をもって調査をすることが考えられます。
詳しくは、弁護士や司法書士といった法律の専門家にご相談ください。

被相続人が亡くなって3カ月が過ぎた後に借金が発覚した場合・・・すみやかに弁護士に相談してください!
 
被相続人が亡くなってから3カ月が過ぎた後、被相続人の債権者から高額な請求が届いたとして、相続放棄をすることはできないわけではありません。
裁判例では「自己のために相続の開始があったこと」を知った時という文言を広く解釈しており、事案によってはなおも相続放棄をすることができることがあります。
もっとも、相続放棄が認められないとしても、債権者の請求には対応をする必要があります。
被相続人が亡くなって3カ月が過ぎた後に借金が発覚した場合には、まずはすみやかに弁護士に相談してください。

6. 相続税申告(10カ月以内)

相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内です。期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。
相続税には基礎控除があり、遺産総額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」以下であれば、相続税の申告は不要です。
例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。
ただし、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの税務上の特例を利用する場合には、基礎控除額以下であっても申告が必要になる場合があります。
相続税の申告先は、被相続人の最後の住所地が西宮市であれば、西宮税務署に申告します。
不動産の評価額の算定や各種特例の適用判断などは、税務の専門的な知見が不可欠のため、税理士に相談をすべきでしょう。

7. 遺産分割協議の実施、遺産分割協議書の作成

遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合には、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは相続人全員が話し合い、誰がどの財産を取得するかを決める手続です。全員の合意が必要であり、一人でも反対すれば協議は成立しません。
協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。相続人全員が署名・押印(実印)し、印鑑証明書を添付します。
相続人間で意見が対立し、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。被相続人の最後の住所地が西宮市であれば、神戸家庭裁判所尼崎支部が管轄しています。

8. 西宮市や宝塚市、芦屋市といった阪神間における相続の地域特性

阪神間は、西宮市・芦屋市・宝塚市など、神戸市と大阪市の間に位置する地域を指します。文化的に成熟した住宅地として発展してきた歴史があり、相続手続においても、この地域ならではの特性を理解しておくことが重要です。

(1) 不動産の資産価値と相続税への影響

阪神間、例えば西宮市の夙川・苦楽園・甲陽園エリア、芦屋市の六麓荘・南芦屋浜エリア、宝塚市の雲雀丘・逆瀬川エリアなどは、良好な住環境と交通利便性から、不動産の資産価値が高い地域として知られています。令和7年の公示地価では、西宮市夙川地区で1㎡あたり約40万円を超える地点もあります
そのため、親世代が数十年前に取得した土地であっても、現在の相続税評価額は想像以上に高額となっていることがあります。相続財産の大半を不動産が占める場合、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超え、相続税の申告・納税が必要となるケースが少なくありません。
また、不動産は物理的に分割することは困難なため、遺産分割協議において「誰がその不動産を取得するのか」「代償金をどう支払うのか」といった協議が必要になります。

(2) 居住の継続と生活基盤の違い

阪神間では、親世代から長年にわたって同じ建物に居住しており、地域への愛着を強く持たれている方も多く、「できれば実家を残したい」とお考えの相続人の方もいらっしゃいます。
他方で、文教地域でもあることから、進学や就職を機に、東京や大阪市内などで生活基盤を築き、実家に戻られる予定のない方も少なくありません。阪急神戸線や阪急今津線、阪神本線沿線は大阪・神戸への通勤には便利ですが、東京勤務や海外赴任の場合には、実家を維持する実益は小さくなります。固定資産税や維持管理費の負担、老朽化した建物の管理といった現実的な課題を考えると、売却や賃貸も選択肢となります。
こうした相続人それぞれの生活状況や将来設計の違いが、遺産分割における意見の対立につながります。「長年住んできた家を手放したくない」という感情的な面と、「維持費の負担や管理の手間を考えると現実的ではない」という経済合理性の面とで、相続人間の溝が深まるケースも実務上よく見られます。

(3) 弁護士が地域の実情を踏まえて相続手続を行うことの重要性

このように、遺産相続は被相続人の遺産状態や相続人それぞれの想い、経済的な合理性の葛藤など、複数の要素が絡み合う複雑な問題となることは珍しくありません。
表面的な法的知識だけで手続をすすめるのではなく、地域に対する正しい理解に基づいたアプローチが不可欠です。

9. 相続登記(不動産の名義変更)・口座の解約等

遺産分割協議が完了した際には、その協議結果に基づき、不動産登記や銀行口座の解約手続などを実施します。西宮市内の不動産であれば、神戸地方法務局西宮支局で手続を行います。
なお、令和6年4月1日から、相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記は登記に関する専門的な知見を要するため、司法書士に依頼することが一般的です。

10. 最後に 虎ノ門法律経済事務所西宮支店による相続サポート

虎ノ門法律経済事務所は昭和47年(1972年)の創業以来、50年以上にわたり法律サービスを提供してきました。令和7年現在、弁護士約100名が所属しており、元公証人、元家庭裁判所裁判官、元民事地方裁判所裁判官といった豊富な経験を持つ弁護士も多数所属しています。
裁判所・公証役場の実務を知り尽くした弁護士がいるからこそ、争いとなることを未然に防ぎ円満な相続にすることができますし、もし争いになっても最適な解決を導けます。
 
また、虎ノ門法律経済事務所西宮支店は、阪神地区出身の支店長弁護士が常駐し、地域の皆様に密着したサポートを提供しています。同時に、全国に支店を持つ虎ノ門法律経済事務所のネットワークを活かし、遠方の相続人との調整や他地域の不動産問題、各種裁判手続にも対応できます。
 
相続手続は一見「役所や銀行に届ければ済む」と思われがちですが、実際には多くの法律問題が密接に絡みます。
西宮市で相続手続に直面された方は、まず弁護士にご相談いただくことが、後悔しない第一歩です。
虎ノ門法律経済事務所西宮支店では、初回30分を原則無料で法律相談を承っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

令和7年10月、当事務所の弁護士が執筆した「遺留分の法律と税務」が出版されました!
 
令和の遺留分制度を基本事項から解説。実務家の悩みどころに指針を提供
相続法の大改正に伴う令和の遺留分制度を基本事項から解説し、実務家の悩みどころに指針を提供する、案件処理に必要十分な実務書。法律相談時に確認すべき事項を網羅するとともに、具体的な設例・文例等を豊富に収載。参照すべき文献・裁判例を適宜紹介した遺留分実務の決定版!」

 
   
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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