2022.11.18

所有者不明土地の解消~「特別代理人の選任」による解決方法~

弁護士 亀井 瑞邑
 

1. はじめに

近年、我が国では、人口の減少や高齢化の進展、地方から都市部への人口移動等を背景として、土地の所有意識が希薄化したことに伴い、所有者が不明な土地が多くあり、この対応が課題となっています。

このような所有者不明土地とは、一般に、不動産登記簿を確認しても所有者が直ちに判明しない土地や、仮に所有者が判明したとしても、その所在が不明で連絡がつかない場合をいいます。

そして、所有者不明土地は、一説には九州本島の大きさに匹敵するともいわれており、今後、高齢者の死亡等により、更にその割合を多くすることが予想されています。

所有者不明土地では、土地の所有者の探索に多大な時間と費用が必要となったりしますので、公共事業や復興事業が円滑に進まなかったり、また、一般の不動産取引等、土地の利用の阻害要因となったりするなど、様々な問題が生じます。

こうした状況をふまえ、平成30年には「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が制定されたほか、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」などが制定され、近年、所有者不明土地の発生の予防とそれの対処に関する法整備がなされています。

当事務所においても、所有者不明土地を占有されている方からのご相談が多く寄せられておりますが、今回は、相続をきっかけに被相続人の所有者不明土地を取得するに至った方の解決事例をご紹介します。

2. 不在者財産管理人による解決

一般に、相続が開始した場合、被相続人の財産を取得するためには、相続人間で被相続人の個々の財産について権利関係を確定させるため、遺産分割協議等を行う必要があります。

その際、被相続人の財産について調査を行うこととなるのですが、調査に際して、行方不明の者が相続人となっていたり、相続人と連絡が取れない場合などがあります(上述した所有者不明土地も、このような事例の一場面といえます。)。

この場合にも、その者との間で遺産分割協議をしなければならないのが原則なのですが、この解決方法としてよく使われる手法としては、不在者財産管理人の制度となります(民法25条1項)。

すなわち、利害関係人として不在者財産管理人の選任を請求し(民法25条1項)、同管理人が選任されたうえで、同管理人との間で、民法103条が定める保存行為等の範囲外の行為として、民法28条に基づき、家庭裁判所の許可を得たうえで、遺産分割協議を行うこととなります。

このような手法によって解決を図るのが通常なのですが、手続的に若干煩雑であり、時間もかかります。また、同管理人に支払う費用もある程度は準備をする必要があります。

そこで、このような不利益があることから、当事務所では、「特別代理人の選任申立て」によることで所有者不明土地の問題を解決しました。

3. 当事務所での解決事案のご紹介(特別代理人の選任申立てによる解決)

<事案の概要>

相続財産としてお父様から不動産を相続した(*厳密には相続していませんが、便宜上「相続した」と記載します。)ところ、見ず知らぬ人物(ただし「姓」は同じ。)が登記上は所有者になっていました。しかし、相続人(依頼者の方)はそのような人物に心当たりはなく、親戚一同も同じく心当たりはありません。登記上の住所に照会をかけても該当者は見つかりません。

そもそも、登記上の不動産取得時は昭和の初期の頃で、仮に当該人物が生存していたとしても非常に高齢となっており、すでに亡くなっている可能性も相応にある事案でした。

依頼者の方は、被相続人(お父様)の代からずっと当該不動産に住んでおり、取得時効の成立は容易に認められると思われたのですが、そもそも被告をどのようにすればよいのかが問題となりました。

<当事務所での解決方法>

上述のとおり、不在者財産管理人の制度や、失踪宣告(民法30条)の請求などで処理をすることも考えられます。

もっとも、本件に関していえば、当該不動産の処理だけを問題とすればよく、遺産分割協議を行わなくとも取得時効の主張によることで解決をすることが見込まれます。

そこで、「特別代理人の選任申立て」によることで、事案の早期解決をすることが出来ました。

4.「特別代理人の選任申立て」とは

民事訴訟法35条1項によれば、以下のように定められています。

法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。

 

そして、大審院昭和5年6月28日決定(民集9巻640頁)によれば、以下の趣旨の判示がされています。

相続人不分明による相続財産法人に代表者がいない場合に、相続財産に対して民事訴訟を提起しようとする者は、特別代理人の選任を申し立てることができる。

 

したがって、この判例に基づくと、相続財産法人が成立(民法951条)する場合に、訴訟提起をしようとする場合には、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明することで、特別代理人の選任申立てをすることが出来ます。

すなわち、①「相続財産法人の成立」=「相続人のあることが明らかではない」こと、②「遅滞のため損害を受けるおそれがあること」を疎明すること、③ 相続財産法人に対する訴訟提起、の3点を準備することで、特別代理人の選任申立てにより、当該不動産に関して、取得時効を原因とする所有権移転登記の判決を得ることができ、事案の解決を図ることが出来ます。

むろん、この訴訟(③)では、訴訟係属後の審理等がそこまで予定されているわけではないので、訴えの提起時において請求認容判決が得られるほどの十分な証拠を準備する必要があるのですが、上手く同制度を活用することが出来れば、費用や時間等で大幅に依頼者の方の利益を図ることが出来ます。

5. 「特別代理人の申立て」に必要な費用や留意事項等

民事訴訟費用等に関する法律3条1項別表第一17「イ(イ) 民事訴訟法の規定による特別代理人の選任の申立て、…(略)」により、③ 訴えの提起(訴状)の印紙代の他に、特別代理人の選任申立書にも500円の収入印紙を貼付することが必要となります。

また、「選任の申立て」である以上、この申立書自体から、民訴法35条1項が定める上記要件を充足していると裁判所が判断するに足りる資料の疎明が必要であり、特別代理人の選任申立てに際しては、慎重な準備が必要となります。

そして、特別代理人の候補者にはあらかじめ内諾を得ることは必要不可欠ですし、当該特別代理人の方は、候補者に選ばれた際には、裁判所に対して、本案との利害関係が無いことの説明などが必要となります。

このように、「特別代理人の申立て」による解決を図る場合には、特有の注意事項があります。また、全ての事案においてこのような解決が出来るわけではありません。

しかし、所有者不明土地の解消に向けては、「特別代理人の選任申立て」も含めた多様な解決方法によるアプローチが重要となります。

当事務所では、依頼者の方の最善の利益となるべく、事案の解決のためにもっとも適切な解決方法をご提案して参りますので、お困りの事がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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