2023.06.05

近い将来、あなたの相続分が制限されるかもしれません!~相続法改正による具体的相続分の遺産分割時限の新設~

令和3年に相続法が改正され、具体的相続分による遺産分割の時的限界に関する新たな条項が新設されました。そして、新設された条項は令和5年4月1日に施行されました。
このコラムでは、一般市民の方々に向けて、具体的相続分による遺産分割の時的限界に関する新たな条項に関する重要な情報をお伝えします。
 

1. そもそも相続分って何?

相続分とは、相続人が相続財産に対して持っている権利の割合のことをいいます。

(1) 法定相続分って何?

法定相続分とは、相続人が取得する相続財産について民法で定められた相続割合(下表参照)のことをいいます。法定相続人の順位により法定相続分は異なります。また、同順位の法定相続人が複数いる場合は、その人数で均等に分けます。
 

法定相続割合
法定相続人 法定相続分
配偶者 父母等 兄弟姉妹
配偶者が
いる場合
子がいる場合 1/2 1/2
子がいない場合 2/3 1/3
子、父母等がいない場合 3/4 1/4
配偶者のみの場合 1
配偶者が
いない場合
子がいる場合 1
子がいない場合 1
子、父母等がいない場合 1

(2) 具体的相続分って何?

法定相続分を前提に、個々の具体的な調整要素を修正した後の相続分のことをいいます。どのような場合に調整されるかというと、1つ目は、特定の相続人が生前に被相続人から遺産の前払いといえるような利益を受けたとき(特別受益)、2つ目は、特定の相続人が遺産の増加に特別の寄与をしたとき(寄与分)です。

2. 具体的相続分による遺産分割の時的限界に関する新たな条項とは?

改正民法により「期間経過後の遺産の分割における相続分」との見出しが付された改正民法904条の3が新設されました。この条項は、一言でいうと、原則として、相続開始から10年経過後は、遺産を自由に分けることができず、相続人が取得する相続財産について民法で定められた相続割合でしか遺産分割ができなくなるということを規定しています。

3. 新設された理由は?

おおまかに述べると、以下の2つの理由で具体的相続分による遺産分割の時的限界に関する新たな条項が新設されました。

(1) 早期の遺産分割の促進

改正前民法では遺産の分割にはなんらの時的限界がなく、それが相続登記未了の状態を放置する原因の1つであると考えられていました。そこで、「相続開始の時から10年」という時的限界を設けることで、具体的相続分によることを主張する相続人に対し早期に遺産分割をさせるきっかけを与え、所有者不明土地の発生を予防しようとして新たな条項が新設されました。

(2) 遺産分割がされないことによるデメリットの解消

法定相続分等による遺産分割の場合には、改正前の遺産分割と比較して、特別受益や寄与分等の考慮すべき要素が減り、遺産分割が容易になることで、既存の所有者不明土地の解消にも資するものだと考えられ、新たな条項が新設されました。

4. 改正後の遺産分割に際して気を付けるべきことは?

相続開始から10年を過ぎると、相続人は、改正前であれば認められていた相続人間での自由かつ柔軟な遺産分割協議が困難となる可能性があります。そのため、相続人は相続開始後、速やかに遺産分割協議を進めることが求められます。相続開始から10年という期間は長いように感じられますが、相続人間の関係が疎遠な場合や相続人間の関係が悪い場合には、あっという間に10年の月日が経ってしまいます。
相続開始の時から10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請求しなければ、10年経過前6か月以内の間の「やむを得ない事由」が存在していた場合や他の相続人が具体的相続分による遺産分割に合意した場合といった例外的な事情がなければ、具体的相続分の制限を受けてしまいます。
 
遺産分割の問題は、弁護士にご相談いただくことで、多くの問題に適切な方針を立て、より迅速に事案の解決を目指すことができます。また、弁護士が代理人として交渉の矢面に立つことで、ご本人の精神的な負担を軽減することにもつながります。
遺産分割の問題でお困りの方は、是非お気軽にご相談ください。
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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