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協議離婚届出書を作成後に協議離婚を翻意し、その後相手が届出書を提出しても、その届出は無効であるとした事例(最判昭和34年8月7日)。
本件協議離婚届書を作成後、X男は市役所係員に対し、離婚届が出されるかもしれないが、離婚を承諾したものではないから受理しないでほしい旨申し出でたこと、および、X男は右届出のあった前日、協議離婚の意思を翻していたことが認められる。
「そうであるとすれば、Y女により届出がなされた当時にはX男に離婚の意思がなかったものであるところ、協議離婚の届出は協議離婚意思の表示とみるべきであるから、本件の如くその届出の当時離婚の意思を有せざることが明確になった以上、右届出による協議離婚は無効であるといわなければならない。」
そして、必ずしも「右翻意が相手方に表示されること、または、届出委託を解除する等の事実がなかったからといって、右協議離婚届出が無効でないとはいいえない。」
勝手に離婚届を提出する行為は無効であるが、後に追認できるとした事例(最判昭和42年12月8日)。
別居中の妻の知らない間に、夫が妻の署名押印を偽造して離婚届を提出した場合、その離婚届は無効であるが、その後の家事調停において、妻が協議離婚を認めることを前提に、慰謝料を受け取る合意をしたときは、その調停の際に離婚を追認したといえる。
夫婦の一方が不治の精神病にかかった場合でも、病者の今後の療養・生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度その方途の見込みのついた上でなければ、婚姻関係を廃絶することはできないとした事例(最判昭和33年7月25日)。
「民法770条は、あらたに『配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないとき』を裁判上離婚請求の一事由としたけれども、同条2項は、右の事由があるときでも裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは離婚の請求を棄却することができる旨を規定しているのであって、民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもって直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである。」
不治とはいえない精神病の妻に対する離婚請求は、療養・生活につき具体的方途を講じていなくても認められるとした事例(東京地判昭和42年11月29日)。
「妻は、精神分裂病に罹患し」
「保養院に入院し、その間、電撃療法あるいは薬物療法、その他専門的生活指導のほか、退院後も精神医学的管理のもとになされる社会復帰のためのナイトホスピタルの施行等もうけ、最近は、右治療等により軽快しかなりの安定状態にあること、今後なお当分の間は精神医学的管理のもとに置かなければ既往からみて再発の危険がないとはいえないが、精神分裂病の欠陥状態にある者相応の能力に応じ要素的な意味での家庭生活を営むことは不可能ではないことが認められる。」
「民法第770条第1項第4号は配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないばあいを離婚原因と定めているが、本件では、回復の見込なきものとは認めることができないから、右を離婚原因とする請求は理由がない。」
(もっとも、本件では、婚姻の破綻について、原被告いずれの努力をもってしても容易に克服しえない諸要素が強く支配した情況が認められるなどとして、民法第770条第1項第5号を離婚原因とする離婚請求は認容できるとした。)
長年会社人間的な生活をしてきた夫の定年後に妻が求めた離婚請求について、婚姻関係の破綻が認められないとして棄却された事例(東京高判平成13年1月18日)。
夫は、妻の立場を思いやるという心遣いに欠ける面があったことは否定できないものの、格別に婚姻関係を破綻させるような行為があったわけではない。諸事情を総合考慮すると、婚姻関係が完全に破綻しているとまで認めるのは相当でないというべきである。
双方の妥協し難い性格の相違から生ずる婚姻生活の継続的不和による破綻が、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとされた事例(東京地判昭和59年10月17日)。
「原被告間の同居期間は合計3年間弱であるのに対し、別居後すでに5年間余に及び、同居期間中も口論が絶えなかったうえ、別居後も右のような状況に改善のきざしは認められず、しかも原告の離婚の意思が固いことからすると、原被告間の婚姻は破綻し、回復の見込がないものと認められる。
確かに口論の原因は、通常の夫婦であれば、歩み寄り、諦めるなどして婚姻を継続することができるような些細な事柄にすぎない。しかし、これを原因に口論に至り、かつ争いを激化させる原因となっている原被告の前記認定の性格、言動が、容易に変化する見込のない以上、双方の妥協し難い性格の相違から生ずる婚姻生活の継続的不和による破綻は婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するというべきである。」
婚姻に際し性交不能を告知せず、婚姻後も性交不能が続いている場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとした事例(京都地判昭和62年5月12日)。
「婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたり性交渉のないことは、原則として、婚姻を継続し難い重大な事由にあたるというべきである。」
有責配偶者からの離婚請求でも、著しく社会正義に反しない場合には認容されることがあるとした事例(最判昭和62年9月2日)。
「思うに、婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあるから、夫婦の一方又は双方が既に右の意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態に至った場合には、当該婚姻は、もはや社会生活上の実質的基礎を失っているものというべきであり、かかる状態においてなお戸籍上だけの婚姻を存続させることは、かえって不自然であるということができよう。
しかしながら、離婚は社会的・法的秩序としての婚姻を廃絶するものであるから、離婚請求は、正義・公平の観念、社会的倫理観に反するものであってはならないことは当然であって、この意味で離婚請求は、身分法をも包含する民法全体の指導理念たる信義誠実の原則に照らしても容認されうるものであることを要するものといわなければならない。

そこで、5号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において、当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては、有責配偶者の責任の態様・程度を考慮すべきであるが、相手方配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情、離婚を認めた場合における相手方配偶者の精神的・社会的・経済的状態及び夫婦間の子、殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、別居後に形成された生活関係、たとえば夫婦の一方又は双方が既に内縁関係を形成している場合にはその相手方や子らの状況等が斟酌されなければならず、更には、時の経過とともに、これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し、また、これらの諸事情のもつ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないのである。
 
そうであってみれば、有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできないものと解するのが相当である。
けだし、右のような場合には、もはや5号所定の事由に係る責任、相手方配偶者の離婚による精神的・社会的状態等は殊更に重視されるべきものでなく、また、相手方配偶者が離婚により被る経済的不利益は、本来、離婚と同時又は離婚後において請求することが認められている財産分与又は慰藉料により解決されるべきものであるからである。」

有責配偶者からの離婚請求において、8年間の別居が「相当の長期間に及んだもの」とされた(最判平成2年11月8日)。
「有責配偶者である夫からされた離婚請求において、夫が別居後の妻子の生活費を負担し、離婚請求について誠意があると認められる財産関係の清算の提案をしているなど判示の事情のあるときは、約8年の別居期間であっても、他に格別の事情のない限り、両当事者の年齢及び同居期間との対比に置いて別居期間が相当の長期に及んだと解すべきである。」
未成年の子がいる場合でも、諸事情により有責配偶者からの離婚請求が認容されることがあるとした事例(最判平成6年2月8日)。
「有責配偶者からされた離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもって右請求を排斥すべきものではなく、前記の事情を総合的に考慮して右請求が信義誠実の原則に反するとはいえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。
これを本件についてみるに、上告人と被告人との婚姻関係は既に全く破綻しており、民法770条1項5号所定の事由があるといわざるを得ず、かつ、また被上告人が有責配偶者であることは明らかであるが、上告人が被上告人と別居してから既に13年11月余が経過し、双方の年齢や同居期間を考慮すると相当の長期間に及んでおり、被上告人の新たな生活関係の形成及び上告人の現在の行動等からは、もはや婚姻関係の回復を期待することは困難であるといわざるを得ず、それらのことからすると、婚姻関係を破綻せしめるに至った被上告人の責任及びこれによって上告人が被った前記婚姻後の諸事情を考慮しても、なお、今日においては、もはや、上告人の婚姻継続の意思及び離婚による上告人の精神的・社会的状態を殊更に重視して、被上告人の離婚請求を排斥するのは相当でない。
 
「そして、現在では、上告人と被上告人間の4人の子のうち3人は成人して独立しており、残る三男Dは親の扶養を受ける高校2年生であって未成熟の子というべきであるが、同人は3歳の幼少時から一貫して上告人の監護の下で育てられてまもなく高校を卒業する年齢に達しており、被上告人は上告人に毎月15万円の送金をしてきた実績に照らしてDの養育にも無関心であったものではなく、被上告人の上告人に対する離婚に伴う経済的給付もその実現を期待できるものとみられることからすると、未成熟子であるDの存在が本件請求の妨げになるということもできない。」
妻及び未成年の子のある男性と同棲した女性は、その子に対し、不法行為による損害を賠償する必要がないとした事例(最判昭和54年3月30日)。
「妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。
けだし、父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは、他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく、父親自らの意思によって行うことができるのであるから、他の女性との同棲の結果、未成年の子が事実上父親の愛情、監護、教育を受けることができず、そのため不利益を被ったとしても、そのことと右女性の行為との間には相当因果関係がないものといわなければならないからである。」
婚姻関係が既に破綻している夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、他方の配偶者に対して不法行為責任を負わないとした事例(最判平成8年3月26日)。
甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。
けだし、丙が乙と肉体関係を持つことが甲に対する不法行為となるのは、それが甲の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、甲と乙との婚姻関係が既に破綻していた場合には、原則として、甲にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないからである。

離婚をしたい場合

20○○年6月3日、CさんがT法律事務所のM弁護士を訪ねてきました。

Cさん:「夫と別居して10年になるのですが、最近夫(D)と離婚してNさんと結婚したいと思うようになりました。別居をしたのは、夫の浮気を機に、始終喧嘩をするようになってしまったからです。Nさんとは、1年前に知り合ったので、決してNさんと一緒にいたいために別居をしたわけではありません。
夫は浮気相手と内縁関係にあることもあって、最近まで全く連絡を取っていませんでしたが、離婚の件を伝えると、全く離婚をする気は無いと言ってきました。夫は内縁関係を続けていれば十分と考えているようで、離婚をしないというのは、明らかに私に対する嫌がらせに過ぎません。こんな嫌がらせを受けるのなら、Nさんと結婚することは、隠しておけばよかったと思っています。何とかならないものでしょうか。」

M弁護士:「Dさんに連絡をしたのは、いつごろですか。電話でしたのですか。」

Cさん:「はい、電話で連絡しました。直接は会いたくないものですから。たしか、4月5日だったと思います。」

M弁護士:「そうですか。2か月くらい前ですね。では、この間に連絡を取ったことは?」

Cさん:「ありません。結婚するから離婚して欲しいと言ったら、ものすごい勢いで怒鳴られて、怖くなって、あれ以来…。」

M弁護士:「なるほど。本当に離婚する気が無いかも含めて、少し確認したほうがいいかもしれませんね。あと、お子さんはいらっしゃいますか?」

Cさん:「それは、どうして…。」

M弁護士:「もし、離婚をするのであれば、親権などはどうされるのかと思いまして。」

Cさん:「結婚してから半年で別居しましたから、子供はいません。」

M弁護士:「そうですか。では、……」

この後も相談は続き、結局もう一度Dさんに連絡をして、離婚をする気が無いのか話合いをすることになりました。CさんはDさんに電話をするのが怖いということなので、M弁護士が付き添って、連絡を取りました。Dさんと交渉した結果、やはり離婚をする気が無いということなので、M弁護士は家庭裁判所に対して離婚調停の申立てをする方針を立てました。

【解説】

なぜ、M弁護士は訴訟を提起しなかったのか。それは、離婚をはじめとした家庭に関する事件については訴訟を提起する前に、まず家庭裁判所に調停を申し立てる必要があるとされているからです(家事事件手続法257条)。これを「調停前置主義」と言います。
 
「調停」は、当事者の一方が申し立てることで、相手方も引き込まれる手続きなので、その点は裁判と同じです。しかし、当事者が合意しない限り成立しないという点が、裁判とは異なります。調停前置主義が採られているのは、特に家庭事件については、当事者の合意で解決ができるのであれば、その方が望ましいという政策的な配慮によります。
今回のようなケースではお互いの意思は固く、なかなか調停が成立するということもないかもしれませんが、話合いで離婚を回避したり、離婚に合意したりすることは決して珍しくはありません。

調停を申し立てたものの、やはりDさんは離婚に応じようとせず、調停は成立しませんでした。そこで、M弁護士はCさんと相談して、訴訟を提起する方針を立てました。

【解説】

離婚のような家庭事件に関する訴訟は、通常の訴訟と手続が異なります。通常訴訟の手続法である「民事訴訟法」の特例として「人事訴訟法」が適用になるのです。人事訴訟の特徴はいくつかあるのですが、重要なものとして、①家庭裁判所が第一審の管轄を有すること、②参与員の制度があること、③当事者の主張立証に必ずしも裁判所が拘束されないこと、が挙げられます。

  • 1. の点については、家庭事件についての人的資源が家庭裁判所は豊富であり、調停から訴訟への移行も連続的にできる等の理由から、平成15年の人事訴訟法改正によって実現したものです(人事訴訟法4条)。
  • 2. の参与員とは、審理や和解の試みに立ち合って、裁判官に意見を述べる役職なのですが、一般国民の中から選ばれます。家庭事件については、一般国民の良識を反映させた方がよいという政策に基づき平成15年の人事訴訟法改正により、人事訴訟に取り入れられました。この参与員は、家庭裁判所が、必要があると認めたときにだけ立ち会わせるもので、すべての事件について関与するわけではありません(人事訴訟法9条1項)。
  • 3. については、民事訴訟の場合、主要な事実について当事者が主張しないことは判決で考慮できない、当事者間で争わない主要な事実について違う認定を裁判所はできない、職権で裁判所は証拠を取り調べられない、という原則をとっています(弁論主義)。これは、一般の訴訟の場合、結局のところ当事者間の紛争なのだから、当事者が主体的に主張立証すべきであり、国家は必要以上に立ち入るべきではないという政策に基づきます。

     しかし、このような政策は、言ってみれば「勝手にしなさい」というようなものであるから、家庭事件については、それでは余りにもドライということになります。つまり、家庭事件の場合は、もう少し裁判所が当事者の事情に立ち入って、事実を調べて、当事者についてどういった解決がベストなのか、真実は何であるのか、考えるのです。
    その結果、裁判所は、当事者の主張立証に拘束されないという原則が適用されることになったのです(職権探知主義、人事訴訟法19条・20条)

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