2021.11.12

インボイス方式(適格請求書等保存方式)の導入が始まります

まだテレビ・新聞等でそれほど話題にはなっていませんが、令和5年10月1日より、適正公平な消費税課税を実現するために、インボイス方式(適格請求書等保存方式)が導入されます。営業部門の請求書発行担当者や経理担当者の業務量が増えることになるのですが、話題にならないのは、年間の課税売上が1000万円以上の消費税の課税事業者であれば、納税額が増えるわけでもないからです。それではこの制度が導入されることになった理由は何でしょうか?
 

1. インボイス方式の導入の理由

令和1年10月の消費税改正により、それまで税率が8%だったのが10%になり、新たに食料品等の購入時に適用する8%の軽減税率が導入されました。これにより、商売によっては仕入と販売にかかる税率に差が生じたりするケースが発生し、商品ごとの税率や税額がわからないと正確な納付税額の計算ができなくなってしまいました。この複数税率が導入されたことによる計算ミスや不正を防ぐことが、インボイス方式の導入のきっかけとなりました。
また販売者が消費税の免税事業者であると、購入者が販売者に支払った消費税額が、販売者が消費税の納税を免除されているため、販売者の手許に残ってしまうという「益税問題」が発生していました。インボイス方式が導入されると、免税事業者である販売者が、消費税の名目で、販売価額に10%オンして請求できなくなるため、この「益税問題」は、ひとまず解決されます。

2. インボイス方式の導入で変わること

インボイス方式が導入されると、次のようになります。

 
販売者がインボイスを発行するためには登録が必要です。「適格請求書発行事業者」として登録をしなければインボイスを発行することはできません。
また、令和5年10月1日以降の取引については、原則として「適格請求書発行事業者」から交付を受けたインボイスの保存が仕入税額控除の要件となります。この点については、以前から、仕入税額控除をするためには、請求書の保管が義務付けられていたのですが、単なる請求書ではなく、消費税の税率、税額、登録番号が記載されている「適格請求書」の保存が義務付けられます。
「適格請求書」の記載事項ですが、今までの請求書に記載されていた「請求書発行事業者の氏名または名称」、「取引年月日」、「取引内容(軽減税率対象品目であればその旨)」、「請求書受領者の氏名または名称」の他に、新たに「登録番号」、「取引価額を税率区分ごとに合計した金額」、「税率区分ごとの消費税額」の記載が義務付けられます。

3. 新規設立法人の2年間の消費税免税を受ける業者は大幅減少

今までは、新規設立法人は、2年間は基準期間がないため、消費税の免税事業者になることができました。しかし今後は、免税事業者だとインボイス(適格請求書)の発行ができなくなるため、自ら進んで、課税事業者の選択を行うことになります。取引先も課税事業者になることを要求してくると思われます。課税事業者になると、消費税申告をする必要もあり、インボイス制度の導入は、小規模の事業者の負担を大きく増やすことになります。

4. 「適格請求書発行事業者」としての登録が始まっています

インボイスを発行するためには登録が必要です。「適格請求書発行事業者」として登録をしなければインボイスを発行することはできません。「適格請求書発行事業者」の登録は、令和3年10月1日より始まっています。日本全国の課税事業者のほぼ全員が登録申請をしますので、税務署からの登録番号の通知に時間がかかることが予想されます。令和4年度末ぐらいまでには、登録の申請をされることをお勧めいたします。
 
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

虎ノ門法律経済事務所の弁護士コラムのページへようこそ。
弁護士相談・法律相談を専門とする虎ノ門法律経済事務所では、様々なトラブルの解決事例も豊富であり、お客様それぞれのお悩み・トラブル内容に沿った弁護士をご紹介することで、トラブル解決の最後までスムーズに進めることを目指しております。
ぜひお気軽にご連絡・ご相談ください。

ご予約はお電話でもメールでもお受けしております。