2023.05.24

共有関係の解消について(共有物分割請求)

弁護士 長谷川 周吾
 

1. はじめに

本記事では、共有関係の解消について説明します。先代からの相続により、不動産を共有することがしばしばありますが、不都合もあり、共有に関する法的な問題は多いです。
たとえば、共有不動産は誰がどのように使用するのか、建物を修繕するかどうか、第三者に賃貸するのかどうか、売却処分の検討など、様々な事項について共有者間で協議しなければなりません。
このうち、建物の修繕などの保存行為は、各共有者が単独で行えますが、その他の共有者が修繕にかかった費用を任意に支払わない場合には問題が発生します。また、共有物を第三者に賃貸するためには、各共有者の持分の価格に従い、過半数で決定する必要があるため、有効活用の妨げになることもあります。共有物全体を売却処分するためには、全員の同意が必要ですので、簡単に換価することもできません(共有持分のみを売却することは可能ですが、市場価値が大幅に下がります。)。
このような各問題が発生してしまうと、共有者間の人間関係も悪化し、さらに共有不動産を有効に活用することができなくなります。
そこで、民法はこのような場合を想定し、共有関係を解消するための手続きを定めております。

2. 共有物分割請求権

民法258条1項は、「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」と定め、各共有者に共有物分割請求権があることを規定しております。
そのため、共有者間で話し合いがまとまらない場合には、裁判所に共有関係の解消を求めることが出来ます。
主要な分割方法としては、①現物分割、②換価分割、③全面的価格賠償、の3類型があり、場合によりこの3つの類型を組み合わせることもあります。

(1) 現物分割

現物分割は、文字通り、共有物を持分割合に応じて物理的に分ける方法であり、主に土地の共有物分割における分割方法の一つとして検討されます。建物は物理的に区切ることが難しいのが通常ですので、現物分割することが出来ない場合が多いです。
なお、土地が狭小、細分化されてしまうと価値が著しく減少する恐れがありますので、このような場合には現物分割を選択することはできません。また、土地の形状によっては、建築基準法上の接道義務を充足するように切り分けることが難しい場合もあり、このような場合も現物分割を選択することはできません。
また、現物分割した各土地の価値に差が発生する問題もあり得ますが、その場合は、差額分を金銭で調整する方法もあります。
このように、土地を物理的に分けるといっても簡単な話ではなく、「どのように切り分けるのか」が大きな争いになります。

(2) 換価分割

換価分割は、対象物を売却して金銭に換価し、その金銭を共有持分に応じて分配する方法です。この換価の方法については、共同売却と形式的競売の2パターンがあり得ます。

ア. 共同売却
共有者が任意の合意により、不動産仲介会社を通して第三者に売却する方法です。形式的競売と比べて、任意の条件(高い金額)で売却できるというメリットがありますが、売買金額の設定や売買契約における諸条件について、共有者間で話がまとまらない場合には利用できません。
イ. 形式的競売
裁判所による手続きで共有不動産を売却する方法です。共同売却の場合と比べて売買代金が低くなるというデメリットがありますが、反対する共有者がいたとしても手続きを止めることはできず、共有関係の解消が法的に実現できます。

(3) 全面的価格賠償

全面的価格賠償は、共有物を、共有者1名の単独所有にして、その代わりに他の共有者に対して賠償金を支払う方法です。ただし、共有者のうちの誰が単独で取得するのか、賠償金の金額について大きな争いとなります。

3. 個別事例における検討

共有物の分割方法は、以上のように主に3つの類型があります。しかし、いずれの分割方法が妥当であるのか、現物分割をするとしてもどのように切り分けるべきなのか、全面的価格賠償をするとしても賠償金の相当価格はいくらであるのか、様々な問題を検討しなければなりません。
①現物分割、②換価分割、③全面的価格賠償、のうちいずれの方法が良いのかは、共有不動産の形状や、現在の使用状態、過去の経緯など、各事件の事情を総合的に考慮する必要があり、不動産取引にも精通している必要があります。
 
当事務所は1972年の創立以来、多くの不動産トラブルを扱い、共有物分割事件の実績も豊富です。共有関係についてお悩みがございましたら、ぜひご相談ください。

 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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