2023.10.06

不動産の使用貸借終了と立退きについて

弁護士 斉藤 健太郎
 

1. はじめに

不動産の使用貸借には特別な人的関係性が絡み合っていることがままあります。なぜならば、不動産は高額であって、無償で貸し出すことは通常想定されないからです。
しかしながら、期間の経過によって、そのような人的関係性が変動・消失することによって紛争に発展するケースも少なくありません。
そんな不動産使用貸借における典型的な紛争の1つとして、使用貸借契約を解消して不動産を明け渡せと請求されるものがあげられます。そのような場合にはどのような対応をすればいいのでしょうか。
 
以下では、使用貸借権の基礎知識を踏まえて、不動産の使用貸借の終了及び当該不動産からの立退を請求された場合の対応について紹介します。

2. 使用貸借契約とは

(1) 使用貸借契約と賃貸借契約の違い

使用貸借契約とは、物の契約に関する契約の一類型で、簡単に言えば、人に物を貸す契約です。また、使用貸借契約は契約書がなくとも口頭で成立します。よく似ている賃貸借契約との大きな違いは、使用料(賃料)の有無です。賃貸借契約では賃料を支払う必要がありますが、使用貸借では、そのような対価を支払う必要はありません。

(2) 使用貸借契約はいつ終了するのか

使用貸借契約が終了したかを判断するためのポイントは ①期間を定めたか、②使用及び収益の目的を定めたか、③終了を主張するのが借主か貸主かの3点です。

ア 期間の満了

使用貸借にあたって期間を定めた場合は、期間の満了によって終了します。

イ 使用及び収益の目的

使用貸借契約の目的を定めた場合には、その目的に従って使用及び収益を終えた場合、あるいは目的に従って使用及び収益するのに足りる期間が経過した場合に終了します。  
なお、目的を定めていなかった場合には、貸主はいつでも解約できることになっています。

ウ 借主か貸主か

使用貸借契約は、借主のための契約なので、借主はいつでも解約をすることができますし借主が死亡した場合には契約が終了します。
一方で、貸主が解約する場合には、目的を定めなかった場合を除いて、上記のような終了原因が必要です。

3. 立退請求に対する対応

(1) 使用貸借の終了を争う

まず、立退きしたくないのであれば、終了原因があるのかどうかを争うことになります。使用貸借契約が終了していなければ立ち退く必要はありません。
したがって、使用貸借契約がされた経緯や、経済的・精神的な扶養が期待されるかといった当事者の関係性であったり、これまでの使用期間の長短、建物の価値、双方にとっての土地・建物使用の必要性の比較といった経済的な要素を考慮して、使用貸借契約が終了していないと反論することになります。

(2) 立退料の支払いによる解決

また、終了原因がなかったとしても、一定の金額を立退料として受領して立ち退くといった解決策もありえます。
お金で解決して立ち退けば以後の人間関係に気を遣う必要もなくなりますし、紛争から早く解放されることによる精神衛生上のメリットもあります。
その場合には、建物に関する資料等に基づいて使用貸借権の価格を算定した上で立退料に関する交渉をすることになります。
 
したがって、使用貸借権の価格をいくらと算定するかがポイントになるでしょう。公共用地の取得に伴う損失補償においては土地使用貸借権の価格は借地権価格の3分の1程度が標準とされていますが、一般市民間で不動産使用貸借を途中で解約する際の使用貸借権の価格の計算方法には種々の考え方があり、いずれを用いるかどうかで経済的負担が大きくことなることになります。

4. まとめ

このように、特別な人間関係が絡み合う不動産使用貸借には、複雑な問題点を孕んでいるため、適切な対処のためには専門家の助力が望ましいといえます。
 
当事務所では弁護士だけでなく、税理士・司法書士の不動産登記や税務についても専門家をそろえています。そのため多角的な視点から、当事者にとって最も利益になる解決案を提案することができます。
不動産に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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