2025.08.15
債権回収は「勝つ」だけでは足りない―確実な回収とするための『二つの視点』―
ご依頼者様の権利擁護・権利実現のため、尽力します。
弁護士 亀井 瑞邑
お金を貸したのに返ってこない、請負代金や売掛金が支払われない――。
相手と直接交渉しても埒があかず、無視され、「もう裁判するしかない」と考え、本コラムを読まれているのかもしれません。
近年はインターネット検索や生成AIの普及により、法的な知識や書式を簡単に入手できるようになったため、「本人訴訟でも何とかなるのでは」と考える方も増えています。本コラムや、他の弁護士事務所のコラムなどをご覧になられて、ご自身で何とかしようと考えておられるのかもしれません。
しかし、現実の法廷はネット記事や生成AIの助言どおりには進みません。
むしろ、表面的な知識だけで臨んだ裁判は、十分な説得力を欠き、結果的に不利な判断を招く可能性があります。
債権回収では①「裁判で勝てる」かどうか、②そして裁判に勝った後に「本当に回収できる」かどうか、という二つの視点が不可欠です。
これらのどちらが欠けても、債権回収はなされなかった、という事態になりかねません。
本コラムでは、債権回収分野のご相談を多く受けている弁護士の視点から、本人訴訟の危うさも含めて、実務上の注意点をお伝えします。
1. まずは「裁判に勝てるかどうか」を見極める
債権回収の第一関門は、法的に勝訴できるかどうかです。
「契約書はないのですが、大丈夫でしょうか?」「借用書を相手に書いてもらったので内容がよくわかっていません。」「かなり昔に貸したお金なのですが、大丈夫でしょうか?」
このようなご質問に対しては、まずは、裁判に勝てるかどうかが問題となります。
裁判の正否は、主張内容と、証拠の有無・質に大きく左右されます。
たとえば、次のようなケースでは、立証のハードルが高くなります。
・借用書や契約書が存在しない
・現金手渡しで送金履歴が残っていない
・返済期限や金額に関する明確な合意がない
・消滅時効が完成している可能性がある
裁判は「真実を語れば勝てる」場ではありません。自らが主張する事実について、証拠をもって裁判所に説明し、説得することができるかどうかが大切です。
たとえば、借用書がない場合には「これは贈与だった」という反論を相手からされることもありますし、現金のやり取りであれば「本当に渡したのか」「金額は正しいのか」と突っ込まれるかもしれません。
こうした場合でも、銀行の出入金記録、メールのやり取り、返済催促の履歴など、複数の間接証拠を組み合わせて事実を立証することは可能です。
実際に、私も、借用書の記載に不備があり、一見すると法律上の要件を欠いてしまっているようにも読めるケースでも、裁判所への説明を上手く構成することで、勝訴判決を勝ち取った経験があります。
もっとも、これらの証拠をどの順序で、どのような論理構造で提示すれば裁判所が「事実」として認定するのかは、とても難しい作業です。当事者ではない第三者である裁判所をどのように説明し、勝訴判決を作るように説得するか―ここには法律実務ならではの戦略と技術が不可欠です。
複数ある証拠のうち、どれを提出し、あるいは提出しないのか。提出するとしてどの順序で、どの論理構造で提示するか。
この【戦略】こそ、法律実務における専門性であり、AIや裁判手続きに関する専門的な知識・経験のない者では難しい部分です。
2. 裁判に勝っても債権を「回収できる」とは限らない
第二関門は、判決を取った後に実際にお金を回収できるかです。
「勝訴判決」という垂れ幕をニュースなどでご覧になったことがあるかもしれませんが、債権回収は、その後にもなお、法的な問題が控えています。
判決はゴールではなく、強制執行をするための“通行証”に過ぎません。相手に資産や収入がなければ、差押えをしても、回収はできません。
たとえば、強制執行手続には、次のような手続があります(その他、弊所の「債権回収」コラムもあわせてご確認ください。)。
・口座の差押え
・不動産競売の申立て
・動産執行
しかしながら、このような手続きは、差押えや競売を申し立てる相手の財産が分からなければ、対象となる財産がわからず、そもそも実行することができません。
相手の財産を調べるには、「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」、「弁護士会照会」などがありますが、時間も費用もかかります。さらにいえば、強制執行の途中で相手が破産してしまえば、債権の回収はほぼ不可能となります。
勝訴判決を獲得する=債権を回収できる、ということではないという現実を、最初に理解しておく必要があります。
3. 本人訴訟が陥りやすい誤算
本人訴訟を検討する方の中には、ネット検索やAI活用で手続きの概要を把握し、「これなら自分でもできる」と感じるケースがあるかもしれません。
しかし、法的戦略や証拠の組み立て方を含め、金銭の返還交渉に関する具体的な方法は、単なる手続きマニュアルには書かれていません。既述のとおり、債権回収を真に実現するのであれば、専門家である弁護士によるすみやかな処置が必要です。
4. 債権回収をするうえで本当に大切なこと
債権回収を実現するためには、①勝訴の見込みを精査することと、②債権回収の可能性を冷静に見極めることの二つを同時に検討する必要があります。
弁護士は、裁判に踏み切る前の段階でこれらを分析し、交渉や和解も含めて最適な回収ルートを提案します。早期の相談は、不要な時間や費用の浪費を防ぎ、回収率を最大化するための最短距離です。
5. まとめ
債権回収のゴールは、勝訴すること(「判決を勝ち取ること」)ではなく、「お金を手元に戻すこと」です。
インターネットやAIがどれだけ進化しても、法廷は机上の知識だけで勝てる世界ではありません。
不安や迷いがある時点で、まずは専門家である弁護士に相談する。それが、あなたの債権回収を成功させる第一歩です。
当事務所では、法人・個人を問わず、様々な強制執行手続を用いて債権を回収してきた実績があります。
債権回収でお悩みのときは、ぜひ、お早めに当事務所にご相談ください。
※ご注意※
債権回収は高度な専門性と相応の労力を要する業務であるため、少額のご案件でも弁護士費用は一定の水準になる場合が多いことをご了承願います。
状況によっては、誠に恐縮ですが当事務所にて対応困難なケースもございますことをあらかじめご承知おきください。
まずはお気軽にご相談いただければ、可能な限り最適な解決策をご提案させていただきます。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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