2024.09.13

NHK連続テレビ小説「虎に翼」 寅子の夫 星航一の職業「最高裁調査官」とは

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パートナー弁護士
川神 裕Yutaka Kawakami
東京弁護士会
山口県
オペラ鑑賞、文楽鑑賞、散歩、温泉旅行
東京大学法学部卒業
東京大学を卒業し、34期司法修習生として修習をした後、昭和57年に東京地裁判事補として裁判官に任官してから約39年間裁判官として勤務しました。第1審や控訴審において主として民事事件を担当しましたが、大阪地裁及び東京地裁では行政部(行政事件を集中して担当する部)で行政事件を多く扱いました。また、合計10年間、最高裁調査官(行政調査官室)として最高裁における判例形成の過程に関わる経験をしました(上席調査官として、憲法判断や判例変更をした大法廷事件にも関与しました)し、大津地家裁所長時代には、件数は少ないものの家事調停事件について調停委員と共に知恵を絞りながら調停での解決を実現するために力を尽くしました。東京高裁では、各種民事控訴事件を審理しただけではなく、配属部が家事抗告部に割り当てられた時期があったため、家事審判事件を抗告審として審理する経験もしてきました。
令和2年に東京高裁部総括判事を最後に退官し、翌年4月から学習院大学法科大学院教授(実務家教員)として、ロースクール学生に対する民事訴訟法、民事訴訟実務などの授業を担当しています。
この度、ご縁を得て、当事務所の一員として弁護士としても働くこととなりました。裁判官としての経験を活かしつつ、弁護士として必要な新たな法的知識等を吸収し、法制度の改正やIT化の進む民事訴訟の運用にも対応できるようにして、相談者、依頼者の皆様に寄り添いながら、紛争の適切妥当な解決のため客観性を持った質の高い法的サービスを提供することができるよう努めてまいりたいと思います。
元裁判官の経験を活かし、弁護士として質の高い法的サービスを提供します。お悩みはお気軽にご相談ください。

2024年4月から放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。

当事務所では、本作品の第16週より、法律実務指導を担当しています。 本コラムでは、同ドラマにちなみ、ちょっとした法曹界の裏話をご紹介します。

最高裁調査官とは

虎ノ門法律経済事務所 弁護士(元裁判官)川神 裕

最高裁判所

NHKの朝ドラ「虎に翼」で、主人公寅子の二人目の伴侶となった星航一は、最高裁調査官に任命されます。

最高裁調査官(正確には最高裁判所裁判所調査官)については、耳慣れない方も多いと思います。裁判所調査官は、裁判官の命を受けて、事件の審理及び裁判に関して必要な調査その他の事務をつかさどる者であって、最高裁に置かれた裁判所調査官を「最高裁調査官」と略称しています。裁判所調査官は通例、裁判所の一般職員ですが、最高裁においては、地裁などでキャリアを積んだ裁判官がその任に当たります。 具体的には、最高裁に係属した事件について、1、2審判決、上告理由書(民事)、上告趣意書(刑事)等を踏まえて、事件記録の精査、法律問題に関する判例・学説、関連する法令、社会的背景等を調査し、報告書を作成して最高裁判事の参考に供するという仕事をしています。各調査官は、担当する事件により、民事調査官室、行政調査官室、刑事調査官室に分かれて配属されます。

私も、裁判官として勤務していた間に、二度にわたり合計10年間最高裁調査官として行政調査官室で勤務しました。最高裁判事の方々の議論を拝聴し、それぞれの判事の豊富な経験に基づいた見識あるお話に触れるなど貴重な経験をすることができました。

星航一のモデルとなった三淵乾太郎さんも、昭和28年3月20日から昭和37年3月7日まで最高裁調査官として民事調査官室で勤務され、判例集に登載された事件だけでも138件に関与されて、それらの判例解説を執筆されています。今では考えられないほどの数です。

ちなみに、現在の最高裁は、千代田区隼町・三宅坂付近にあり、私もそこで勤務したのですが、三淵乾太郎さんが活躍された当時の最高裁は、今の東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎のある霞が関1丁目にあった旧庁舎でした。当時の最高裁庁舎にあったシャンデリアが、現在の東京高等・地方・簡易裁判所合同庁舎の玄関ホールに使われており、当時をしのぶことができます。

★こちらからその画像を見ることができます。 裁判所ウェブサイト「東京高等裁判所ふぉと・ぎゃらりぃ

★こちらもご参照ください。 裁判所ウェブサイト「写真で見る最高裁判所の50年」(PDF)

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