2023.01.23

後遺障害認定の具体的な流れと注意点

弁護士 丸山 智史
 

後遺障害認定手続きまでの流れ

事故に遭ったらまずは画像(XP、CT、MRI)を取得する

不幸な事故に遭ったら、身体に異変がなくても、直ちに病院に行きましょう。
事故直後の診察結果は、後遺症の認定や相手方の交渉においても重要な資料になります。
また、状があった場合には、常にメモに残しておきましょう。メモでも自覚症状があったことの証拠になります。
医学的に自覚症状を裏付けるためにも、事故発生日後、直ちに画像(XP、CT、MRI)を取得しましょう。
なお、画像の費用は、損害賠償の費用として含めることができます。

事故後は通院に専念する

治療費や慰謝料などの人身に関する費用は、通院が終了しなければ確定しません。
お怪我により治療を続ける際には、治療に専念して頂くことを優先しましょう。(なお、事故直後の時点では、賠償額増額が確定しないことから、弁護士にご相談されても、お受けできない場合が多いです。)

保険会社から治療費打ち切りの打診があった場合

被害者個々人によって身体的な特徴や個体差があるのは当然ですが、怪我の内容によっては、おおよそ目安となる治療期間があります。そのため、まだ痛み等の症状が残っている場合であっても、「そろそろ治療終了になります。」「保険会社が治療費支払えるのは、〇月までになります。」等保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。
これは、保険会社側としても、事故による受傷に対して必要以上に治療費を支払う必要はないという考えによるものです。
それでも、保険会社に従って通院を止める必要はありません。
ご自身の健康保険により立替払いをしていただくことで、通院することは可能ですし、むしろ治療が必要であれば、通院を続けるべきです。
痛みが残っているのであれば、主治医に「痛みが残っているため、治療を続けたい」とはっきり述べて、通院を継続しましょう。

通院後は後遺障害認定手続きを行う

交通事故の損害賠償請求において一番重要なことは、後遺障害認定を獲得することです。
事故後に通院を継続していたが、痛み等の症状が回復せず通院終了となった場合、受傷後6か月を経過した時点で後遺障害認定手続を進めます。

後遺障害認定手続きについて

後遺障害等級の認定手続は、相手方保険会社を通じて行う方法(事前認定)と被害者自身が申立をする方法(代理人となった弁護士が行う)(被害者請求)がありますが、被害者請求をお勧めします。
それは、被害者ご自身の努力で、後遺障害認定を獲得することができるからです。
後遺障害認定手続を行う際には、後遺障害診断書を主治医に作成してもらう必要があります。
これに加えて、事故発生日後、取得した画像等(XP、CT、MRI)を添付して、加害者の加入する自賠責保険会社に申請します。

画像所見がない場合

後遺障害認定の判断は、後遺障害診断書と画像(XP、CT、MRI)等の提出資料から判断されます。
画像がない場合、医学的な所見を判断できないため、後遺障害が認定が難しくなります。 
しかしながら、画像所見がない場合でも、後遺障害認定を獲得する方法はあります。

むちうち症の事例の場合

交通事故の被害者のうち、頚椎捻挫等の診断名がつく、いわゆる「むち打ち」症のご相談を多数お受けしています。
むち打ち症とは、事故の衝撃によって頚部に負荷がかかり、頚椎周囲の組織(靱帯、椎間板、頚部筋群等)に損傷が生じることをいいます。CTやMRI等で、頚椎などの骨に画像所見が写るものもありますが、多くは軟部組織の損傷にとどまり、画像所見が認められません。
画像所見が認められないのですが、頭痛、首や肩、腕や手の痛みやしびれなどの神経症状を訴える方が多く、なかには1年以上の長期間の治療を要することがあります。
画像所見のない「むち打ち症」でも、後遺障害等級14級を獲得できた事例があります。

後遺障害等級認定の考慮要素

後遺障害認定を獲得できた多くのケースを分析すると、後遺障害認定の判断は、以下のような要素が考慮されているものと考えられます。

(1) 事故態様の重大性

事故車両の損壊状況を示した写真や修理の見積書、警察が作成した実況見分調書やドライブレコーダーなどの証拠書類から、事故発生の状況や車の損壊状況などから身体への衝撃の程度が推定することができますので、事故と後遺症との因果関係が認められるならば、後遺障害認定の判断に有利に考慮されます。
したがって、事故車両の損壊状況がわかる写真や修理の見積書、警察が作成した実況見分調書やドライブレコーダーなどは、後遺障害認定において有利な証拠になります。

(2) 通院の頻度、期間

通院頻度・期間が多ければ痛みが強く、治療の必要性が認められると判断されやすくなります。通院頻度が少なければ、相手方保険会社から早期に治療費の打切りを求められることが多いです。
痛みがあれば、積極的に通院しましょう。そして、お怪我により治療を続ける際には、治療を優先しましょう。最低でも1週間に1回、1か月で4回の頻度で通院するようにしましょう。
痛みが続く限り、痛みの症状を主治医にお伝えして、治療を継続していくことが重要です。

(3) 後遺障害診断書の記載

後遺障害認定を勝ち取れる一番重要なポイントは、後遺障害診断書の記載内容です。

 

むち打ち症の場合には、

・後遺障害診断書に訴えのしびれや知覚障害の部位が明確に記載されており、事故当初から継続して痛みが生じていたこと
・筋力(握力)の低下と神経障害部位との対応関係に矛盾がないこと
・深部腱反射、病的反射の結果が記載されていること
・ジャクソンテスト、スパーリングテストなどの神経根症状誘発テストの結果を実施していること
・実測した数字を踏まえて可動域の制限が認められることが記載されていること

 

診断書を作成する医師には、上記内容を踏まえたポイントを抑えた診断書を作成してもらうことで、後遺障害が認定されやすくなります。
診断書の目的を理解して頂けるよう、診断書を作成する医師とのコミュニケーションを図るため、弁護士が診断書の作成時に同席して、医学的所見に関する質問や意見を伺うことも有効です。

私も実際に、医師の診断やテストに立ち合い、医師の方と医学的所見に関する意見を伺い、議論を重ねたところ、診断書にポイントを踏まえた内容や結果、医師としての所見を詳細かつ具体的に記載して頂いたことで、画像所見のない「むち打ち症」であっても、後遺障害等級14級9号を獲得することができました。

最後に

当事務所には、交通事故の事件に長年携わっているベテランの弁護士や全国から交通事故の相談を受けている経験豊富な弁護士など交通事故に精通している弁護士が多数在籍しています。
画像所見がない場合であっても、また後遺障害認定に自信がない場合であっても、後遺障害認定を獲得できる場合があります。
不幸にも交通事故に遭い、お怪我をされた場合には、是非、当事務所にお任せ下さい。
被害者の方に寄り添い、是非、ご一緒に後遺障害認定を獲得していきましょう。
 
 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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