2025.09.05

家賃滞納トラブルへの適切な対応と法的手続き

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パートナー弁護士
与能本 雄也Yuya Yonomoto
不動産や企業法務を中心に幅広いご相談を承っています。
ご依頼者様一人ひとりに寄り添い、最適な解決を目指して全力を尽くします。

弁護士 与能本 雄也

 

1. 家賃滞納トラブルの概要

不動産オーナーにとって、家賃滞納は重大な問題です。滞納が長引けば、その間の賃料が得られないこととなり、建物の維持管理やローン返済にも影響を与えることになります。
 そのため、トラブル発生に対する事前の対策をしておくことや、家賃滞納トラブルが発生した場合は、早期に適切な対応を行い、トラブルの長期化を防ぐことが重要です。

2. 交渉及び法的手続きの流れ

家賃の滞納が発生した場合、不動産オーナーは借主に対して、未払い賃料の請求や退去の交渉を行います。交渉でまとまらない場合は、訴訟手続に移行することとなります。

3. 解除が認められる場合

賃料不払いにより賃貸借契約における契約解除をする際には、以下の点が重要です。

 

(1) 賃料不払いがあること

賃料不払いの金額の目安ですが、例えば、1ヶ月分の賃料が数日遅れたくらいでは、特別な事情がなければ、解除は認められません(東京地判令和2年7月20日等)。
 2ヶ月分の賃料不払いのケースでは、多くの裁判例では、解除を認めていますが(東京地判令和2年9月24日、東京地判令和3年1月15日等)、なかには解除を否定したケースもあります(東京地判平成29年10月17日等)。
 3~4ヶ月分の不払いがある場合は、解除の有効性が概ね認められる傾向があります。

 

(2) 解除の意思表示

① 催告解除

相当の期間を定めて、未払い賃料支払いの催告をして、その期間内に未払い賃料の支払いがない場合には、賃貸人から契約を解除することができ、これを「催告解除」といいます。

② 無催告解除

契約上、「賃料の2ヶ月分の支払いを怠った場合」「何らの催告を要せずに解除をすることができる」旨の特約がある場合で、催告をしなくても不合理とはいえないような事情がある場合には、賃貸人は催告なく契約を解除することができます。これを無催告解除といいます。

③ 解除のタイミング

 解除の意思表示が到達する前に、賃料が払われ、未払い金がなくなった場合は、解除時点において未払いがありませんので、基本的には解除はできません。他方で、解除の意思表示が到達した後に未払い賃料が支払われたとしても、解除は有効のまま影響はありません。

④ 信頼関係が破壊されていない特段の事情

2~4ヶ月分の賃料の不払いがあった場合は、解除できる可能性が十分あります。もっとも、賃借人から「信頼関係が破壊されていない特段の事情」が主張され、これが認められた場合は解除は認められません。
 不払いが生じ、交渉をしている段階で、賃借人の言い分をよく確認しておくことが重要です。

4. 裁判及び強制執行による明け渡し

借主が、交渉において退去に応じない場合、訴訟を提起して判決を得ることができれば、強制執行手続きを進めることができます。
 これにより、賃借人を、強制的に退去させることが可能となります。
 もっとも、裁判手続きには時間がかかるため、訴訟の前に交渉での合意や、訴訟上の和解をすることで、早期に退去させることが重要です。

5. 滞納トラブルに対する対策

(1) 特約の活用

①    無催告解除の特約

前述のように「賃料の2ヶ月分の支払いを怠った場合」「何らの催告を要せずに解除をすることができる」旨の無催告解除の特約を定めておくことで、定めた期間の未払いが生じた場合に、催告せずに解除をすることができます。
 もっとも、賃料1ヶ月分の賃料の不払いで無催告解除ができる旨の特約については、判例(最判昭和43年11月21日民集22巻12号2741頁)は、催告をしなくても不合理ではないような事情が存在する場合には有効となる旨、有効になる場合を限定しています。
 そのため、1ヶ月分の未払いで無催告解除する旨の特約が有効となる場面は限定されてしまいますので、2ヶ月以上の賃料の不払いとして、定めておくのがよいと考えられます。

②    賃料相当損害金の規定

賃貸借契約終了後、賃借人が明渡しを遅滞する場合に、退去までの間は、月額賃料の倍額の賃料相当損害金を支払う旨の特約がなされることがよくありますが、このような特約は有効と解されています。
 賃料未払いのケースでは、いかに早期に賃借人を退去させるかがポイントとなります。上記特約の規定があることで、賃借人に退去へのプレッシャーを与えることができます。また、例えば、直ちに退去することを条件に、賃料相当損害金のうち倍額部分を免除するなど、交渉材量とすることもできます。

 

(2) 借主の信用調査及び連帯保証人等の担保

当然ですが、賃貸借契約を締結する前に、賃借人の信用力や資力に関する調査を十分行うことで、滞納の可能性を下げることができます。
 また、連帯保証人を付けて、かつ連帯保証人の資力に関する調査を十分に行っておくことも重要です。
 なお、連帯保証人が個人の場合は、令和2年4月1日施行の民法改正以降は、極度額の記載がない場合は連帯保証契約は無効となりますので、極度額を定めておく必要があります。実務上は、極度額は12~36ヶ月で記載されることが多いです。
 また、保証会社の機関保証を活用することで、滞納が起きた場合に、同額を回収することができます。ただし、保証の範囲が賃料6ヶ月分等と限定がされていることが多いので、いずれによせ早期に未払いについて対処する必要があります。

 その他には、敷金・保証金を十分に設定しておくことが考えられます。店舗用・事業用の賃貸借契約の場合においては、原状回復費用が、例えば数百万円などと高額になることがあります。家賃の滞納が起きるケースにおいては、賃借人が原状回復費用を払えないケースも多いですので、十分な敷金・保証金を設定しておることが重要です。

6. まとめ

家賃滞納は不動産オーナーにとって大きなリスクとなります。そのため、事前に予防の対策をしておくことや、トラブルが発生した場合は、速やかな対応が重要となります。
 当事務所は、建物明渡しに関する交渉・訴訟についての多数の解決事例を有しています。また、滞納トラブルを未然に対策するために、賃貸借契約のリーガルチェック等の不動産オーナー向けの法的サポートを提供しております。
 実際にトラブルが起きた場合は勿論、トラブルが起きていない場合でも是非、お気軽にご連絡、ご相談ください。

 

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