2025.06.02
養子縁組の相続について徹底解説!普通養子縁組と特別養子縁組の違いとは?
執筆・講演実績も豊富で、実務家向け書籍や新聞・専門誌への寄稿も多数。医療経営士3級の資格も保有。
弁護士 加唐 健介
養子縁組をすると、実子と同様に相続権を持つようになりますが、普通養子縁組と特別養子縁組では相続関係が異なる場合があります。また、相続税対策として養子縁組を活用することもできますが、人数制限など注意点も存在します。
本コラムでは、養子縁組における相続人の考え方や相続税の影響、法定相続人へのカウント方法、さらにトラブルを避けるための留意点について、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
目次
1. 養子縁組とは
養子縁組とは、法律上の親子関係を築く制度であり、民法上、養子は養親の嫡出子とみなされます(民法第727条)。実親との関係が継続する「普通養子縁組」と、実親との関係を終了させる「特別養子縁組」の2種類があります。
2. 普通養子縁組と特別養子縁組の違いとは
普通養子縁組は、養親との親子関係を形成しつつ、実親との親子関係も継続する点が特徴です。一方、特別養子縁組は、家庭裁判所の審判を経て行われ、成立すると実親との親子関係は終了します(民法第817条の9)。したがって、特別養子は実親の相続人にはなりません(民法第817条の10)。
普通養子縁組
普通養子縁組によって養子は養親の相続人となります。また、実親との親子関係も維持されるため、実親の相続人にもなります(民法第727条)。つまり、実親・養親双方の遺産を相続する権利があります。
特別養子縁組
特別養子縁組は、養親とのみ親子関係を持つ制度です。家庭裁判所の審判が必要であり、成立すれば実親との法律上の親子関係は終了します(民法第817条の9)。これにより、実親の相続権を失い、養親の相続人としてのみ権利を持ちます(民法第817条の10)。
3. 養子縁組の相続税対策
養子を迎えることで、相続税の基礎控除額や生命保険の非課税枠が拡大されることがあります(相続税法第15条)。ただし、税法上は相続税の計算において控除対象となる養子の人数に制限があります(相続税法施行令第3条)。
相続税の基礎控除とは
相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出されます(相続税法第15条)。この「法定相続人」には養子も含まれますが、税法上は控除対象として認められる養子の数に制限があります。実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人までが控除対象となります(相続税法施行令第3条)。この制度を活用することで、相続税の課税対象額を大きく減らせることもあります。
4. 養子縁組をしたときの法定相続人・法定相続分について
養子は法定相続人に含まれますが、養子縁組の種類によって扱いが異なります。
(1) 普通養子縁組と法定相続人の数え方
普通養子は養親の相続人であると同時に、実親の相続人にもなります(民法第727条、民法第890条)。そのため、両親双方から相続を受けられる点が特徴です。また、相続税計算上、控除対象人数にも加算されますが、前述の制限に留意が必要です(相続税法第15条但書)。
(2) 特別養子縁組と法定相続人の数え方
特別養子縁組では、実親との法的親子関係が終了するため、実親の相続人にはなりません(民法第817条の10)。養親の相続人としてのみ法定相続人に数えられます。このため、普通養子よりも相続関係がシンプルになります。
5. 養子縁組をした場合の注意点
養子縁組には法律上及び税務上の留意点が多数存在します。
(1) 養子縁組には縁組意思が必要であること
養子縁組には、当事者双方に「縁組をする意思」が必要です(民法第802条)。形式的な届け出であったり、節税目的のみで縁組された場合、あるいは当事者の一方又は双方が判断能力を欠く状況であった場合には、その有効性が後に争われることもあります。実際に、縁組の真意がなかったとされて縁組が無効と判断された裁判例もあり、相続開始後に親族間で法的トラブルが発生するリスクがあります。
(2) 孫を養子にした場合の影響
孫を養子にすると相続税の世代間飛越課税(いわゆる「2割加算」)の対象外になるため節税効果があります(相続税法第18条)。ただし、他の相続人(特に子)との不公平感からトラブルの原因になることもあるため、説明や配慮が必要です。
(3) 実子がいる場合の養子縁組
実子がいる場合、養子を迎えることに反発が起こる可能性があります。相続時に養子と実子の相続分が同じとなるため、不平等感が生じることもあります。このため、養子縁組をする際は家族間の理解と合意が重要です。
(4) 控除対象となる養子の人数に制限があること
相続税計算における控除対象人数として認められる養子の数は、実子がいる場合は1人、いない場合は2人までと制限されています(相続税法施行令第3条)。これを超えた人数の養子は、相続税の基礎控除や生命保険非課税枠の計算上カウントされません。
6. 養子縁組の相続トラブルを避けるには
養子縁組は、相続人の範囲や取り分に影響を及ぼすため、実子との間に感情的な対立を生むこともあります。相続順位や取り分が変わる可能性があることを十分に説明し、遺言書の作成などを通じてトラブルを予防することが重要です。また、税務上の効果を狙って養子縁組を行う場合には、適用制限や税務調査リスクも伴うため、税理士・弁護士などの専門家に事前に相談することが望まれます。
7. まとめ
養子縁組は、相続関係に大きな影響を与える制度です。普通養子縁組と特別養子縁組では相続人としての立場が異なり、また相続税の計算にも影響します。法定相続人として何人までカウントできるか、実親との関係がどうなるかなど、制度上の仕組みとリスクを理解し、トラブルのない円滑な相続のために専門家の助言を活用しましょう。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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