2022.10.07
育児・介護休業法って何?概要から改正のポイントまで紹介【2022年10月】
目次
1. 育児・介護休業法について
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」といいます。)が、2021年6月に改正され、2022年4月から段階的に改正法が施行されることになります。
同法は、もともと少子高齢化が進む中で育児や介護を行う労働者が、仕事と家庭を両立して働きやすくするように支援するための法律になります。従来、男性でも育児休業を取得できる取り組みがなされてきましたが、それでもまだ日本の育休の取得率は、女性でも100%には達してはおらず、男性の実際の育休取得率は2019年度で7.48%、2020年度で12.65%と、年々増加している傾向はあるものの、女性の5分の1にも満たない状況があり、政府は2020年までに男性の育休取得率を13%にするという目標を立てていましたが、それが達成できなかったという現状にあります。
男性の育休が進まない原因として考えられるのは、男性が育休取得するうえでの社内の整備が整っていない、それに対する社内の認知や理解が追い付いていない、一度に長く休んでしまうことが難しい、育休を取得することによって収入が減ってしまうなどいろいろな問題があって、多くの企業では、まだ男性が育休を取りづらいという風土があります。
他方、近年は共働き世帯も増え、働く女性が増えたにもかかわらず、女性の家庭での負担はまだまだ重く、出産を機会に退職してしまう女性もまだ多く存在します。こうした現状を変えて、男女を問わず育児が出来る社会を目指すために、法改正によって男性の育休支援が今回加えられることになりました。
2. 法改正の5つのポイント
今回の法改正によって、以下の5点が変わります。やや誤解を生みやすい点としては、今回の改正法により男性の育休が義務化されるわけではありません。
② 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け【令和4年4月1日施行】
③ 育児休業の分割取得 【令和4年10月1日施行】
④ 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 【令和5年4月1日施行】
⑤ 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和【令和4年4月1日施行】
3. 各法改正のポイント
① 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 【令和4年10月1日施行】
本改正により、原則、子どもが1歳から最長2歳までとする育休制度とは別枠で、出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得できる出生時育児休業制度(いわゆる「産後パパ育休」)が創設されました。
これまでは、母の出産後8週間以内の期間内に父が育児休業を取得した場合には、特別の事情がなくても再度父が育児休業を取得できるいわゆる「パパ育休」の制度は存在しましたが、本改正により削除になりました。
代わりに新設された出生時育児休業制度というのは、このうち母の出産後8週間以内の期間内を別枠として独立させたもので、この間も分割して2回(出産時・退院時や里帰りから帰るタイミング等)育休を取得することが可能となりました。これにより、出産予定日がずれたとか産後の母子の健康状態を見て決めたい等の要望臨機応変に取得することが可能となりました。
② 育児休業の分割取得等【令和4年10月1日施行】
本改正前においては、産後8週間から1歳までの間の育休について、原則として育休の分割取得はできませんでした。しかし、本改正により、その間、分割して2回まで育休を取得することが可能となりました。また、子が1歳に到達する時点で保育所に入所できないなどの事情がある場合の1歳半までの育児休業について改正前は、1歳到達日の翌日からのみ取得可能でしたが、本改正により、1歳到達途中からでも取得が可能となるなど育休開始日について柔軟に運用することができるようになりました。
③ 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和【令和4年4月1日施行】
本改正前は、有期雇用労働者の育休取得には、①事業主に引き続き雇用された期間が1年以上、②1歳6か月までの間に契約が終了することが明らかでないことの2要件が必要でした。しかし、本改正により、①の要件が廃止され、2022年4月1日以降に有期労働者が育休を取得する場合、②のみが適用され、無期雇用労働者と同様の扱いが受けられるようになりました(ただし、労使協定の締結により除外は可能)。
④ 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け【令和4年4月1日施行】
本改正により、企業は男女ともに育休取得の申請が円滑に行われるように、育休を取得しやすい雇用環境の整備が義務付けられることになりました。具体的には、企業は次のような措置を一つまたは複数講じる必要があります。
2 育休に関する相談体制の整備等(相談窓口の設置)
3 従業員への育休取得事例の収集・提供
4 従業員への育休に関する制度と育休取得促進に関する方針の周知
また、女性の社員が妊娠した場合や男性社員の妻の妊娠出産に際しても次のような育休制度についての個別の周知と取得意向の確認が必要になります。
2 育児休業・産後パパ育休の申出先
3 育児休業給付に関すること
4 従業員が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
これにより、企業の対応としては、業務の属人化を排除し、チームで育休取得中の業務をカバーする仕組みの準備が必要となります。
⑤ 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 【令和5年4月1日施行】
本改正の施行はまだ先ですが、常時雇用する労働者が1000人越えの企業を対象に、インターネットの利用その他適切な方法で、一般の方が閲覧できるように、① 育児休業等の取得割合、または② 育児休業等と育児目的休暇の取得割合について年1回公表することが義務付けられることになります。
4. 最後に
今般の育児・介護休業法の改正により、各企業は、産後パパ育休についての規定を新たに加えたり、育児休業の対象者や申し出の手続・撤回、期間等に関して、従来の育休規定を見直す必要が生じます。本改正が反映された育休規定の見直しについては、厚生労働省のホームページで詳しい規定例が掲載されていますが、自社において育休規定の見直しや社内の育休制度の整備を行うことについてご不安がある場合には、是非当事務所にご相談ください。
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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