2023.12.18

兄弟姉妹が相続人になるケースとは?その場合に起こるトラブル事例と対応策をご紹介

相続人は原則として配偶者と子どもですから、その場合は被相続人(故人のこと)の兄弟姉妹は相続に関係なくなります。しかし、例外的に相続人となる場合がありトラブルに巻き込まれることもあります。
このコラムでは、そういった兄弟姉妹が相続人になるケースとその考え方を紹介したうえで、兄弟姉妹が相続人になる場合に特有の問題点と対応策について紹介します。
 

1. 兄弟姉妹が相続人になるケースとは?

ケース① 被相続人の子(孫)がおらず両親も死亡している場合

被相続人に子や孫がおらず、かつ、被相続人の両親や祖父母も存命でなければ、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
 
法定相続分の割合は、被相続人の配偶者の有無(生死)によって変わってきます。
被相続人に配偶者がいれば、配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です。兄弟姉妹が複数いる場合には、この4分の1をさらに人数で頭割します(例:2人いれば8分の1ずつ)。
被相続人に配偶者がいなけれれば(亡くなっていれば)、兄弟姉妹のみが相続人となります。兄弟姉妹が複数いる場合には、人数で頭割します(2人いれば2分の1ずつ)。
なお、かつて配偶者がいたがすでに離婚しているという場合には、その配偶者は相続人になりません。

ケース② ほかの相続人が相続放棄した場合

被相続人に子や孫がいたり、両親や祖父母が存命であるということであれば、基本的に被相続人の兄弟姉妹が相続人になることはありません。
しかし、子・孫や両親や祖父母がいてもその全員が相続放棄をした場合には、巡り巡って被相続人の兄弟姉妹にも相続権が回ってくることになります。
 
法定相続分の割合は、ケース①と同様で、被相続人の配偶者の有無(生死)によって変わってきます。

2. 兄弟姉妹の法定相続人の範囲と順位について

民法に基づいて相続する権利のある人のことを法定相続人といいます。
上記1では相続人が具体的に誰になるかをケースごとに見てきましたが、以下では法定相続人の範囲とそれを決める順位の考え方を解説します。 

兄弟姉妹が法定相続人になるケースと法定相続分の図

兄弟姉妹の法定相続人の範囲と順位

まず、被相続人に配偶者がいれば(離婚せずに存命であれば)、配偶者は常に法定相続人となります。
 
一方、他の親族が法定相続人になるには順位があり、順位が上のグループのみが法定相続人となります。
第1順位は子や孫のグループです。子が1人でもいれば(存命であれば)子が相続人となります。子が先に亡くなっていた場合でも孫がいれば孫が代襲して相続人となります。
第2順位は父母や祖父母のグループです。子も孫もいない場合、父母の片方でもいれば(存命であれば)その父母が相続人となります。(なかなか無いかも知れませんが)すでに父母がなくなっていた場合でも祖父母の片方でもいれば(存命であれば)その祖父母が相続人となります。
そして第3順位が兄弟姉妹です。被相続人に子や孫がおらず、かつ、被相続人の両親や祖父母も存命でなければ、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

3. 兄弟姉妹が相続人になる際の注意点

兄弟姉妹が相続人になる場合に注意すべき点を解説します。

① 異母兄弟・異父兄弟も含まれる

前述のとおり、被相続人に子や孫がおらず、かつ、被相続人の両親や祖父母も存命でなければ、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
ここで注意すべき点としては、この兄弟姉妹のなかには異母兄弟・異父兄弟も含まれるということです。そのため、父母が再婚している等して異母兄弟・異父兄弟がいる場合には、兄弟姉妹が死亡して自身が相続人となるときは同時に異母兄弟・異父兄弟についても相続人になることになります。

② 代襲はあるが、再代襲はない

「代襲」とは相続すべき人がすでに亡くなっている場合に代わりにその相続人が法定相続人となることです。「再代襲」とは、代襲すべき相続人もすでに亡くなっている場合に、さらにその相続人が法定相続人となることです。
被相続人にひ孫までいた場合、たとえ子が亡くなっていても孫に代襲しますし、すでに孫も亡くなっていてもひ孫に再代襲します。
一方、兄弟の相続では、相続人となるべき被相続人の兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合でもその兄弟姉妹に子がいればその子に代襲相続しますが、すでにその子も亡くなっている場合にはたとえその子に子がいても(兄弟姉妹から見れば孫)再代襲をすることはありません。

③ 兄弟姉妹には遺留分がない

被相続人の兄弟姉妹は相続人となることはありますが、遺留分は認められていません。
そのため、例えば子のいない被相続人が配偶者や愛人に全部相続させる旨の遺言を遺していた場合、被相続人の兄弟姉妹は法定相続人ではありますが遺留分がないために相続財産に対して権利を主張することはできません。

④ 相続税が20%高くなる

被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には、被相続人の配偶者や子(養子含む)・父母等の相続人と比べて相続税が2割加算されることになります。相続税の負担まで考えて公平になるように遺産分割協議をしたい場合には注意をする必要があります。

4. 兄弟姉妹が相続人になる場合に起こるトラブル事例とその防止策

事例① 異母兄弟・異父兄弟がいることが初めて判明

親は子に前や後の婚姻のことを話さないことがあり、亡くなって初めて異母兄弟・異父兄弟の存在を知るということもあります。それまで顔を見たことがなく存在すら知らない異母兄弟・異父兄弟との間である日突然相続トラブルを抱えることになるのです。
まずは、身近な方が亡くなった場合にはまずは戸籍をよくよく見てみる必要があります。ただでさえ兄弟姉妹の相続では必要とされる戸籍の数が多くなりがちですが、異母兄弟・異父兄弟が絡んでくるとさらに増えることになりますので、専門家に収集を依頼することで抜け漏れがなくなります。
次に、これまで連絡をとったことがなくどんな反応が返ってくるか分からず不安を覚えるという場合には、やはり専門家に相談をして代わりに連絡をしてもらうことが考えられます。

事例② 相続放棄により相続人になったのに、そのまま放置

被相続人に子・孫や両親や祖父母がいてもその全員が相続放棄をした場合には、巡り巡って被相続人の兄弟姉妹にも相続権が回ってくることになります。そして裁判所から自身が相続人になった旨を知らせる通知書が届いても、「被相続人にはたしか配偶者も子もいたから自分には関係なかろう」と思い込んで放置してしまうと、3ヶ月経過すると相続放棄をすることができなくなり単純承認をしたとみなされてしいます(相続したことになる)となってしまいます。
それまでの相続人が相続放棄をしているということは、相続財産に多額の借金があって引き継ぎたくなかったからという場合が多く、注意が必要です。裁判所から通知が来たら放置などせず、まずは専門家に相談しましょう。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか。兄弟姉妹が相続人になるケースというのは、普通の相続とは一味も二味も違ったことが多く、その進め方も難しくなってきます。不安を覚えたら、まずは専門家にご相談ください。

 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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