2023.04.14

相続順位とは?法定相続人の範囲や相続割合について解説

弁護士 加唐 健介
 
ある人が亡くなったとき、誰がその方の遺産を相続するのでしょうか。
もしその方が遺言を遺されている場合は、遺言の記載によることになります。
しかし、遺言を遺していない場合は、民法の定めによることになります。このコラムでは、民法で定められた相続人の範囲と順位について解説することにします。相続の問題を考えるにあたって出発点となる事項ですので、しっかり確認するようにしてください。
 

1. 法定相続人とは?

民法第886条から895条において、亡くなった方の遺産を誰が相続するのかが定められています。相続する権利を有する人を相続人といい、民法で定められた相続人を「法定相続人」といいます。

2. 法定相続人の範囲とは?

法定相続人の範囲についてご説明します。
まず、亡くなった方の配偶者はどのような場合でも法定相続人となります。
正式な婚姻関係にある必要があるため、内縁関係や事実婚の状態では法定相続人にはなりません。この点について、内縁関係や事実婚によるパートナーシップ契約が死亡により解消された場合は、離婚による財産分与の規定を類推適用しようとする考え方がありますが、最高裁の判例で否定されています。仮にこのような方に遺産を遺そうと言う場合は、遺言や死因贈与契約を作成しておく必要があります。
逆に別居していたり離婚調停が係属していた場合でも、亡くなった時点で婚姻関係にあれば、法定相続人となります。
次に、配偶者以外の親族については、子、直系尊属、兄弟姉妹が法定相続人となる可能性がありますが、この順番で相続順位が定められていることに注意が必要です。

3. 相続順位とは?

相続順位とは、法定相続人となることができる順番です。相続順位が高い人から順番に相続人となることができ、相続順位が低い人は相続順位が高い人が存在しない場合に限って相続人となります。

相続順位の1位は「子ども」

第1順位の法定相続人は子です。相続が発生した時点で子は既に亡くなっていたが、孫がいるような場合は、孫が相続人となることがあります。これを「代襲相続」といいます。  

相続順位の2位は「親」

第2順位の法定相続人は直系尊属です。「直系尊属」というのは、父母や祖父母など、自分より前の世代で、血のつながった直系の親族をいいます。亡くなった方に子がおらず、その代襲相続人もいないとき、亡くなった方の両親が存命の場合はその両親が法定相続人となります。稀な例ですが、両親がいずれも亡くなっているが、祖父母が存命の場合は、祖父母が法定相続人となります。おじやおば、配偶者の父母や祖父母は直系尊属にならないことに注意が必要です。

相続順位の3位は「兄弟姉妹」

第3順位の法定相続人は兄弟姉妹です。子(代襲相続人を含む)も直系尊属もいない場合は、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります。亡くなった方が独身であったり、子がいなかったりした場合に、兄弟姉妹が法定相続人となるケースは多くみられます。

4. 法定相続人が持つ遺産相続の権利とは?

民法では、それぞれの法定相続人が遺産を取得する割合を定めています。これを「法定相続分」といいます。「法定相続分」は、誰が法定相続人となるかによって変化します。

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(1) 配偶者が法定相続人となる場合の法定相続分

ア 配偶者のみが法定相続人となる場合、配偶者の法定相続分は全部となります。
イ 配偶者と子が法定相続人となる場合、配偶者と子の法定相続分は各2分の1となります。子が複数いる場合は、人数で均等分割となります。
ウ 配偶者と直系尊属が相続人となる場合は、配偶者と直系尊属の法定相続分は3分の2と3分の1となります。直系尊属が複数いる場合は、人数で均等分割となります。
エ 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合は、配偶者と兄弟姉妹の法定相続分は4分の3と4分の1となります。兄弟姉妹が数いる場合は、人数で均等分割となります。

(2) 配偶者が法定相続人とならない場合の法定相続分

配偶者が法定相続人とならない場合は、子、直系尊属、兄弟姉妹の順番で法定相続人となることになりますので、先順位の者が全部を相続することとなります。ただし、同順位の者が複数いる場合は、人数で均等に分割します。

5. 法定相続人の範囲の注意点とは?

「法定相続人」や「法定相続分」についての注意点をいくつかご説明します。

(1) 法定相続人となる子の法定相続分

法定相続人となる子は、婚姻関係にある配偶者との間でもうけた子に限られず、認知した子も含まれ、法定相続分は均等となります。
以前は、婚姻関係にある配偶者との間でもうけた子(嫡出子)とそうでない子(非嫡出子)の間で法定相続分に差がありました(改正前民法900条4項前段)が、平成25年9月4日の最高裁大法廷の決定により、遅くとも平成13年7月当時においては、嫡出子と非嫡出子との間で法定相続分に差を設ける規定は、法の下の平等を示した憲法14条1項に反するという判断が示されました。この決定を受けて、平成25年12月25日に民法が一部改正され、前記規定が削除されました。
さらに、相続が発生した時点で認知がされていない子であっても、認知の訴えを提起することにより親子関係が形成することができます。
弁護士に持ち込まれるケースでは、相続人が発生した時点で認知されていない子との遺産分割協議や、遺産分割協議成立後に、認知の訴えにより親子関係が形成された場合の処理などがあります。

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(2) 法定相続人が相続放棄をした場合

相続放棄とは、家庭裁判所に対し遺産の相続権を放棄する旨の申述をすることをいいます。相続放棄をした法定相続人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます。先順位の法定相続人全員が相続放棄をした場合は、次の順位の親族が法定相続人となりますし、同順位の法定相続人の一部が相続放棄した場合には、残りの法定相続人で均等分割となります。なお、相続放棄は代襲相続原因とならないため、例えば子が全員相続放棄しても、その子(孫)が法定相続人とはならないことに注意が必要です。

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(3) 相続欠格や相続人廃除の対象者がいる場合

相続欠格とは、被相続人の命を奪い、または奪おうとしたり、遺言を破棄するといった、相続制度の基盤を破壊する重大な非行・不正をした相続人について、相続資格をはく奪する制度です。相続人廃除とは、被相続人に対する虐待や重大な侮辱などの著しい非行をした相続人について、家庭裁判所が申し立てを認めた場合に、相続資格をはく奪する制度です。法定相続人に相続欠格や相続人廃除の対象者がいる場合の処理は、相続放棄とほぼ同様ですが、相続欠格や相続人廃除は代襲相続原因となることに注意が必要です。
例えば、親御さんが、虐待や浪費をした子どもの相続権を排除したいという意向で遺言の作成を相談されるケースがあります。このようなケースでは、遺言の中に相続人廃除の申立てを盛り込むことを検討するのですが、当該子どもにも子(遺言者にとって孫)がいる場合は、当該子どもを相続人廃除したとしても孫に相続権が移るため、遺言者の意向が十分実現されない、ということがあります。

(4) 法定相続人がいない場合

被相続人に親族がおらず法定相続人がいない場合は、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が、相続財産管理人を選任します。相続財産管理人が選任されたことは官報で公告され、相続財産管理人は相続人の捜索を行います。相続財産管理人は、相続財産の管理や清算を行うことを目的としており、家庭裁判所の許可を得て、相続財産を換価処分することもできます。
また、法定相続人ではないけれども生前被相続人の療養監護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者は、特別縁故者の申立てを行い、相続財産を一定の分与を受けることもできます。
その他相続債権者や手続費用に充てられた残りの財産については、国庫に帰属することになります。

 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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