2023.12.11

共有物の使用、保存、管理、変更について

弁護士 長谷川 周吾
 

1. はじめに

本記事では、共有不動産の使用や、共有不動産の保存、管理、処分(売却)について説明します。先代からの相続等により、不動産を共有することがしばしばありますが、不都合もあり、共有に関する法的な問題は多いです。
例えば、共有不動産の使用方法や修繕について、共有者間で意見が分かれてしまう場合、不動産を効果的に利用することができないという問題が発生します。このような場合には、共有物分割を検討しなければなりませんが、意見が割れている場合であっても、各共有者が単独でできる行為もありますので、以下詳述します。

2. 共有物の使用について

民法第294条は、「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」と定めます。
もっとも、具体的にどのように使用するかは、共有者間の合意によって決めることとなります。一般的には、使用方法や収益分配の方法についての協議は共有物の管理にあたるため、「各共有者の持分の価格に従い、過半数で決する」と考えられています。

3. 共有物の保存について

共有物について「保存行為」を行うことは、各共有者が単独で行うことができます(民法252条但し書き)。この「保存行為」とは、財産の現状を維持するための行為を意味します。
例えば、共有不動産を修繕すること、共有不動産について相続登記を行うこと、共有不動産を不法占拠している第三者に対し明渡請求を行うこと、は保存行為に該当します。
なお、共有不動産について大規模な修繕を行うという場合は、「保存行為」ではなく後述する「管理行為」または「変更行為」に該当する可能性がありますので、弁護士にご相談されることをお勧めします。

4. 共有物の管理について

共有物について「管理行為」を行うには、「各共有者の持分の価格に従い、過半数で決する」必要があります(民法252条本文)。この「管理行為」とは、共有物の性質を変えない範囲内において、その利用または改良を目的とする行為をいいます。
例えば、共有不動産を第三者に賃貸することは、管理行為に該当します。

5. 共有物の変更について

共有物について「変更行為」を行うには、「他の共有者の同意」を得なければすることができません。つまり、共有者全員が同意しなければできないという意味です。この「変更行為」とは、共有物の管理の範囲を超えてその性質を変える行為を意味します。
例えば、共有建物を取り壊すことや、共有物全体を第三者に売却すること、共有物全体に担保権(抵当権等)を設定することは、変更行為に該当します。
自分の共有持分だけを第三者に売却するという行為は、単独で行うことができますが、一般的には共有物全体で売却するのと比べて市場価値は低下すると考えられます。

6. 共有物について協議が調わない場合

共有物の管理や変更について共有者間で協議が調わない場合は、共有物を分割することを請求することができます(民法256条1項)。
別のコラムに共有物分割請求の手続き、内容について記載しておりますので、ご参照ください(「共有関係の解消について(共有物分割請求)」)。

7. おわりに

以上が共有物の使用、保存、管理、変更についての一般的な法律論となりますが、厳密には、「保存行為」、「管理行為」、「変更行為」のどれに該当するのか、区別が難しいケースもあり、裁判で争われることもあります。
共有者が独自の判断で行うことは、新たなトラブルの発生にもつながりますので、共有物に関するお悩みがあれば、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所は1972年の創立以来、多くの不動産トラブルを扱い、共有物分割事件の実績も豊富です。共有関係についてお悩みがございましたら、ぜひご相談ください。

 
※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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